「セーブ・ペンシル」

銃要虎


「ちょいちょい。待ちなされ。そこな美少女!そちにこれを上げようぞ。」
「あんた誰よ!」
「別に名のる程の者ではないぞな。これこれ、これは一見何の変哲もないしゃーぷぺ
んしるの如くに見える。されど実は人生リセット機なのじゃ。」
「ああそう。じゃあね…。」
「待たぬか!これはおぬしにとって、たいへん利益のある話じゃぞ。」
「キャッチセールスの人は大抵みんなそう言うわ。それにね私、あんたの相手をして
いるヒマはないの。あーあ、今日はもう最悪!放課後に先生に呼び出されてんのよ。
もう急がないと。ああもう!喫煙ぐらいでいちいち咎めなくてもいいじゃない!」
「人の話しを聞かんかあ!このバカ娘が!!これはお前にとって良いモノなのじゃ
ぞ。さあ、このしゃーぷぺんしるを持ってみ。そしてまずは一度押してみよ。」
カチッ。
「ふむ、宜しい。それでは時計を見て。今は4時46分17秒じゃな?」
「う・・うん。19…20…」
「じゃあ時計を見ながら、もう一度押してみい!」
カチッ。
「…15…16…うそ…秒針が一瞬で元に戻ったわ!そんな!」
「どうじゃ。面白いじゃろう。つまり一回目に押した時点がセーブされ、もう一度押
せばそこからやり直せるという訳じゃ。それというのもこの世はすべて脳のプログラ
ミングに過ぎずそのバグを突けば…」
「これくれるの?」
「…ああとも。」
「すっごーい!…うーん。でもさ、先生に喫煙が見付かる前に戻ることは出来ないの
よねえ…」
「うーむ。しかしそれでも使い道はあろうて。」
「ええ。そ、そうね。ありがとう。これは使えそうだわ。ふふふ。つまり何をやって
もリセット出来るのよね。取り消し可…イケルかも…あ、でもちょっと待って。今こ
こで押してから行くわ。何かあったら今この時点に戻って来れるってコトでしょう?
つまり…何かトンでもない不都合があったら、今目の前に居るあんたに突き返すから
ね!」
カチッ
「ふぉふぉふぉ。賢いことで。せいぜい宜しくお使いなされ。」
しかし、この謎の老人が邪悪な笑みを浮かべたのには、気が付くよしもない…。
「あ!あなた!一体何をしているのこんなところで!呼び出しを食らった懲罰室で煙
草を吹かすなんて…なんて娘!…いい度胸ですこと。フーッ。その勇気だけは誉めて
あげましょう。でもどんな酷い目が待ち受けているかは御分かりの筈ね?学則に従わ
ない捻くれた根性を叩き出してあげるわ。涙が枯れるまで後悔させてあげるから
ね。」
「はん。喫煙がなにさ?この暴力女教師!さっさとご愛用のその鞭で、体に聞いて見
たらいいじゃないのさ。いつもそれで罪もない生徒たちに因縁をつけては、趣味で体
罰してるんでしょう?」
「ふふふ。覚悟は出来ているようですね。いいでしょう。二度とそんな口がきけない
ような体にしてあげます。」
さあさあ、もっと近寄って来な、センコウ!そしたら後ろ手に隠し持っている角材で
脳天をブッ叩いてやるわ!どうせリセットできるんだから、思いっきりやってストレ
ス解消してやる!
「でも今回は鞭ではありません。趣向を変えて、煙草の罪は煙草で償って頂きましょ
う。火のついた煙草をあなた柔肌に押し付ける…代わりに、たっぷりとお灸のお仕置
き施してあげます。それっ!」
不意に飛び掛かられて羽交い締めにされ、後ろ手に縛り上げられてしまった。
「あらあら、この角材はなにかしらねえ?ひょっとして、これを私に振り下ろそうと
でもしたの?危ないじゃないの。相当に悪い娘ね。人間並みの罰じゃ駄目かしらね
え。先生は何もかも全てお見通しよ。今日は本当に怒ったわ。もう容赦しなくてよ。
お灸の雨を降らせて地獄を見させてあげる。あらなに?この胸のシャーペンは。これ
も外して置きましょうね。」
「あっ!ダメ先生!それだけは駄目なの!」
カチャ…。
その瞬間。先生の肩がビクッと震えた。
「あら何これ…そう…そう言うことだったのね…。なるほど…。」
絶対絶命!先生はその一瞬で全てを理解した…と言うよりは。ノックを押して、離す
までの間にもう一つの時間が流れたということ。このシャーペンのリセット機能を理
解する時間が。そしてノックを離した瞬間にセ−ブした時点に戻って来たと言うこと
なのだろう。
「面白いことしてれくれるじゃないの。ふふふ。シャーペンをノックした時点に帰っ
て来れるのね?そう、やり直せるというのなら……、何もお灸を使うことはないわ
ね。一度煙草で直接に拷問してみたかったのよ。不良ものに良くあるでしょう、そん
なシーン。うふふ…。」
「ねえ、嘘でしょ。先生?お願い!」
「さあ、胸をはだいて、乳首をお出し!苛めてあげるわ。」
先生はおもむろに煙草に火を付けると、例のシャーペンをノックした。……。そして
離した時にはハアハアを酷く荒い息を吐いていた。
「せ…先生え!私に何をしたの?」
「ハッ!はあはあ。ひん剥いて…はあ、体じゅうに煙草の火を押し付けては、白い柔
肌をチリチリを焦がすの…はあ…あなたは狂ったように慈悲を求め…気絶する…はあ
はあ。」
「先生…恐い…。」
「もう焼くのはちょっと食傷気味だわ。はあ。もうお灸はいい…。はあ。次は鞭の限
界ってヤツを実験してみることにするわ。ウチの規則では12回以上は叩けないこと
になっているのよ。だから何時間もかけてゆっくりといたぶったり出来ないの。だか
らね、鞭を受ける肌の限界については、かねがね知って置きたいと思っていたのよ…
あ、と、その前に机に拘束させてもらうわね。これをノックした後だと死ぬ気で抵抗
するでしょう。」
「何をされたか覚えてないなんて恐いよう…。」
「覚えている方がもっと恐いわよ。さあ、そこの机にうつ伏せにおなり。そう、それ
からスカートとパンティーを降ろして。あなたが実験台になってくれるなら、記憶に
残るお仕置きは勘弁してあげてもいいのよ。素直になりなさい。」
ああ、なんてこと!もうあの謎の老人の居た時点に戻ることはできない。両手両足を
しっかりと机に括り付けられた。
カチャ
「それじゃあ行くわよ。色んな鞭でたっぷりと実験してあげるからね」
ヒュッツ…ばしいいいん!!
「い…・ッ痛ああああい!!ちょっと待って!うそ!記憶あるわよ!」
「可哀相に。どうやらあなたは、セーブ後の世界の住人のようね。もう駄目よ。観念
なさい。どうせ消え行く世界のあなたを人間扱いする気なんてないわ。」
「そんなあ!何かおかしい…。うう!」
「無記憶の実験台を安請け合いした分身を呪うのね。でもそれって、あなた自身のこ
とじゃなかったかしらね。」
ガサゴソダダン
「こら!何をやっとる!」
「こ、校長先生?!」
「君。いくらなんでもこれはヤりすぎじゃないのかね。体罰はむろん大いに結構。だ
けど対外的には問題にはなって欲しくないんだがね。それにそのシャーペンは何かね
?何か訳ありのようだね?」
「ああ!校長先生!それは!それだけはダメ…。」
カチャ
「…そういうことかね。ハハン成る程、一種のタイムマシンか。何をやっても消去で
きるという訳だな。人間、こんな時には本性がでるな。ハンっ。まるで獣だな、どこ
まで残忍になれるのかね。全く。君は最低の人間だよ!恥ずべきことだよ。見損なっ
たぞ!」
校長はそう言ってから、咳を一つして、おもむろにもう一度ノックした。
「さてと、ここから先のことは、無かったことになるのだな。ぐははは。一度、女教
師と女生徒とをセットで責め抜いてみたかったのだよ。ぐふふふ。二人とも可愛いの
お。これから男の恐ろしさをじっくりと訓えてやるからな。さあさあ、こちらに来な
さい、そうそう。二人ともお尻を出すんだ!本当の鞭の痛さを訓えてあげよう。」
「…ねえ、先生…、校長がノックした後でも時間が流れてますよねえ。これってさっ
き先生の鞭を受けた時と一緒なんです。…だからつまり、これから校長先生がするこ
とも、何らかの理由でリセットされないんじゃないんでしょうか?」
「これが現実になるってこと?そんな!」
「自業自得ですね。」
「このエロオヤジに陵辱されるのが?嫌あ!私の人生終りだわ…。」
「おい!なんだあ?エロジジイだあ?借りに教師たるものが、校長に暴言を吐くと
は。許されることではないぞ。これは骨の髄まで思い知らせねばならんようだなあ。
ぐふふふふふふ。」

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