「歴史」

by caner

「ねえ、メグ、タイラー先生がタイムマシンを発明したって知ってる?」
「勿論よ.タイラー先生ってなぞの中国人かと思ったら天才科学者だったのね」
「ちがうわよ、日本人の血が混じってるらしいわよ」
「そんなことどうでもいいけど、タイムマシンなんてみてみたいわね、キャシー」
「放課後、タイラー先生の部屋を覗いてみましょうよ」
「でも、タイラー先生はこわそうだわ 昨日もスーがお尻をパドルでぶたれたって」
「覗くだけなら平気よ」

バージニア州ツインピークスの聖ケイン女学校は独立当時の面影を残す古い建物で、最先端の科学発明が成し
遂げられるようなところではなかったが、数年前から物理学の教師として非常勤で来ているタイラー博士は
姉妹校のバーチヒル大学の教授も兼任する時間物理学者で、タイムマシンの基礎となる時間空管理論では有名な
存在だった.タイラー先生の物理の授業は難しく、タイムマシンの理論らしき事も女学生達に話していたのだが、
彼女らに理解できたのは「過去に戻って歴史に介入すると大変な事になる」といった程度の内容だった、タイラ
ー博士の研究室は校舎の奥の1階にあり、裏の広大な畑に面していた.

「メグ、誰もいないよ」
「勝手に入っていいの?」
「大丈夫よ、 これがタイムマシンかしら? メグ、おいでよ、いろいろ機械があるよ」
「ええっ、本当に大丈夫? このレバーは何かしら」
「これが時代設定スイッチね、150年前になってる、ふーん」
「そんなの押していいの?狭いわね、あっ、ごめん」
「おっと、なんか音がしたわ、 キャシー!機械がうなってる」
「出ましょう キャー」

「ごほごほ、キャシー大丈夫?」
「メグも大丈夫? すごいほこりっぽい あれっ.ここ研究室じゃない」
「ええっ!タイムマシンが作動しちゃったの?」
「そう見たいね.でてみようよ」
「なんか倉庫みたいだね ドアも開いてるよ」
「あれっ、学校の中だよ.とすると未来の学校にきたの?」
「未来じゃなくて過去じゃない?スイッチが150年前になってたよ」
「メグ、外に出てみようよ」

「今とおんなじ、タバコ畑ね あっサムがいる」
「ドラッグストアのサムね、どうして200年前にいるのかしら、あれは診療所のダニエル先生じゃないの?」
「あっ!アン先生までいる みんな煙草の葉を摘んでるみたいだけど」
「見て.男が鞭を持ってるわ ダニエル先生がたたかれてる! ひどい 怠けるなって怒鳴ってる」
「キャシー これって歴史で習った黒人奴隷じゃない」
「南北戦争前だから まだ黒人奴隷がいるんだ」
「かわいそう あんなにぶたれて あっ 止めなさいよ」
「メグ だめよ 見つかったら歴史が変わっちゃうわ」

二人はタバコの生い茂る畑の影で日が暮れるまで奴隷達の悲惨なありさまを見た
彼らは足に重しと鎖、鞭におわれてつらい労働を休みなく続けているのだった.

「キャシー 本当にやるの? 歴史が変わっちゃうかもしれないよ」
「授業で習ったでしょ リンカーンが奴隷解放するんだから、歴史はかわらないのよ」
「わかったわ みんなを助けましょう」
メグとキャシーは黒人奴隷達の閉じ込められている檻の鍵を壊し、納屋にぶらさがっていた
鎖の鍵もみつけて黒人の一人に渡してやった
「どこの誰かは知りませんがありがとう」サムに似た黒人が言った
二人の少女達は、偉大な人助けをした喜びにわくわくしていた

奴隷達が集団脱走した騒ぎに乗じてメグとキャシーは難なく校舎に入り込み
タイムマシンに乗り込んだ
「このスイッチで間違いないわね 現在目指してgo!」

「また戻ってきたのね 見覚えがある 間違いはないわ」
「メグ タイラー先生が戻ってくる前に部屋を出ないと」
「そうね こっちから畑に続いているから畑に出ましょう」

裏口から畑に出た少女達がタバコ畑に走り出て 息をついていると
後ろに大きな黒い人影があった
「こいつら 白人がなんでこんなところでさぼっているんだ!」
巨大な黒人に襟首を掴まえられて、二人はタバコ畑を管理小屋の方に連れて行かれた
途中で見える光景は、タイムマシンに乗ってみた光景と似ていた
違うのは、鞭で追われているのがすべて白い肌をしている点だけだった

二人の少女は、小屋に連れていかれ 一気に服を引き裂かれ、下着をはがされた
日にあたらない尻は瞬く間に鞭の洗礼で真っ赤にはれあがった
「サム 助けてあげたじゃないのよ!」
メグの悲壮な叫び声は股間に打ち据えられた縦鞭で消された
「白んぼがこんなところでなにやってやがる、脱走したらどんな目に会うかわからせてやるぜ」
ケインが振り下ろされる
両手に鎖がかけられ、尻を丸出しにしたままキャシーとメグはタバコ畑を歩かされた
畑ではメグがひそかにあこがれていたフリッツが、やはり鎖につながれていた
「見ないで フリッツ」
むき出しの下半身をさらしての行進は少女達にとってあまりに恥ずかしかった
ちらっと横目でメグ達の白い尻を見たフリッツは「よそ見をするな」と鞭を食らっていた
二人の少女は、屋敷の横の小さな倉庫のような建物に連れ込まれた
壁に受け込まれた鉄輪につながれ、再び太股が鞭で打たれた
尻は何故かそれ以上打たれなかった
やがて 番号のついた焼き印が 何も押されていない(brand new)
尻に気づいた一人によって運ばれてきた

そのころ
校舎の中では黒人生徒を前に 東洋人との混血の噂のあるタイラー先生が
歴史の講義をしていた どうやら物理学者はやめたらしい
「1850年のいわゆる黒人サムの反乱に端を発した黒人革命によって
わがアメリカが黒人による黒人のための黒人の国家として再出発することとなった.
現在の白人奴隷制は日本や中国からは人権侵害と批判されているが タバコを中心とした
農業の発展は世界的にも大きな貢献をしており、これも合理的な白人奴隷制の賜物なのである」

戻る