「制服の告白」 銃要虎


よし、完璧だ。鏡の前に立ち惚れ惚れする。
そうして俺は制服の効用について考えていた。
ここは知る人も少ない女子矯正院。どうにも手の付けられなくなった少女たちが密か
に送られて来る処だ。彼女らに社会の規則を訓え込むために、ここでは厳罰主義が徹
底される。鞭によって服従の概念を教え込ませるのだ。
俺がここの管長になった時は…そりゃあ悩んだものだった。いかに仕事とは言え、規
則を破った少女を呼びつけ、お尻を剥き、陰惨なまでに鞭を当てることに…むろん躊
躇わない訳はない。何よりも心が痛んだのは…実は…俺自信がなぜかそれに妙な興奮
を覚えてしまうことだ。哀れ剥き出しの白い肌が傷ついていくことに…堪らない美し
さを見出す。そして哀切な叫びが俺の胸の高まりを加速させていく…。
やましい気持ちがつい鞭を持つ手を鈍らせ、院の統制が危うくなりだした頃、ようや
く俺は気付いたのだ。残忍な笑いを浮かべて欲望のままに鞭を振るっているのは、そ
れは俺ではない、と。管長という地位がそれをさせているのであって、俺自身ではな
い。役職がそれをさせているのだ。
今日も完璧に管長の威厳を表わすべく制服を着込む。最後のボタンを留めた時、俺は
変身するのだ。そうだ俺はこの院を鉄拳で支配する管長なのだ。その通り。なんてサ
ディスティックな顔!血に飢えた狼だ。いいぞいいぞ!
朝食前のやつらの元へ、朝の訓示を垂れるべく域内に入った。少女らが人だってい
る…取っ組み合いの喧嘩だ。それでも俺を見ると流石に恐れをなして止まる。
「29番!38番!如何なる理由があろうとも秩序を乱した罪は重い。無論のこと喧
嘩両成敗だ。判っているな!」
「違います!私ではありません。67番です。」
29番の少女が必死に懇願している。そうなのかもしれない。だが真実がどうだった
かなんて、大した問題ではない。一度宣言したことはたとえ誤りでも実行するのだ。
当事者の特定なんてどうでもいいことだ。つまらん。

先の二人の少女が俺の処へ連行されて来た。29番の少女に下半身を晒して机に伏せ
るよう要求する。ちっ、駄目だこいつは。すっかり怖じ気づいて許しを乞うている。
いまいましい。まだ俺の好みを何も判っていないようだな。俺は気丈な少女が好きな
のだ。拗ねて強がり「煮るなり焼くなり好きにしな!」という態度で俺に向かってく
る少女を、最後にはヒーヒー鳴かすのが俺の好みなのだから。初めから泣いて懇願を
繰り返す女なんて鬱陶しいだけだ。可哀相だが、そんな奴には怒りに任せて鞭を叩き
付けるだけだ。

え?嫌だなあ。演技ですよ。ホント。これも総てはこの子らの為。二度と戻って来た
くないと心の底から思わせるのが俺の仕事なんだから。もう決して係わり合いになり
たくない変態趣味の鬼軍曹の役を敢えて買って出ているだけのことですよ。これも親
心で怨まれ役をしているだけで、決して本心から楽しんでいる訳ではないですよ。い
やあ、本当だって。信じて下さいよ。またまたあ。誤解しないで下さいね。演技です
よ。演技…(地だけど…)。

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