風俗資料館
    風俗資料館内特別展示
     所蔵原画セレクション 第一回
     〜喜多玲子・美濃村晃・須磨利之〜


     
      2009年春の風俗資料館内特別展示
       所蔵原画セレクション 第一回
      〜喜多玲子・美濃村晃・須磨利之〜

      期 日 2009年3月2日(月)〜2009年4月29日(水)
      場 所 風俗資料館
           Tel:03-5261-9557/E-mail:pl-fs@kagoya.net
      別途入場料 不要

      ※本展示は通常の方法で図書館にご入館された方のみが
      ご鑑賞いただけます。会員以外の方は「ビジター」、女性の
      方でしたら是非「夜の図書館」の時間をご利用ください。
      よって期間中は館内の蔵書も全て閲覧可能です。

      ※左写真――「裏窓」グラビア撮影時に、藤沢修カメラマン
      がスタジオにいた須磨利之を撮影したオフショット。モデル
      の後ろでくつろぐ貴重な一枚(昭和30年代のもの)。

    ■風俗資料館内特別展示とは――

    「糠六閻魔帖 羅城門の女」
     あぶめんと1970年4月創刊号掲載


    『玲子悦虐素描集』『美しき縛しめ』
    『玲子画帖』より


    昭和26年発行B5版『奇譚クラブ』より

     風俗資料館では書籍や映像作品のほかに、多くの作家達が描いた膨大な原画コレクションや貴重な写真資料(その他、自筆の書簡など、作家ゆかりの品々)を所蔵しています。普段は閉架書庫に収められ、会員も目にする機会の少ないこれら秘蔵資料を、2009年3月より、二か月ごとにテーマを変えて館内で公開してまいります。
     期間中は、一つのテーマに沿ってセレクトされた様々な資料が、新設展示ウォールを中心にあらゆる場所に配置され、風俗資料館内を彩ります。展示は通常の図書館と併設しておこないます。ここでしか見ることのできない貴重な作品に囲まれて、ゆっくりと蔵書を閲覧する贅沢な時間をお楽しみください。


    ■所蔵原画セレクション 第一回――
     初めての展示となる2009年3月2日(月)〜4月29日(水)の二か月は、以前から会員の要望が高かった「喜多玲子=美濃村晃=須磨利之」の秘蔵資料を公開いたします。
     数あるカストリ雑誌の一つであった『奇譚クラブ』を日本初のSM専門誌に変貌させていった名編集者・須磨利之は、繊細で優美、情感あふれる「責め絵」を喜多玲子の名前で描き、他にも時代物、歴史物、現代風俗物、ユーモア物など多くの読物のイラストを、それぞれ別の筆名で巧妙に描きわけた鬼才中の鬼才です。
     しかし『裏窓』の初代編集長でもある須磨利之の描いた作品は、激しい悪書追放の時代と重なり、残念ながら殆ど世に残されておりません。編集部に警察の捜査が入り押収されてしまうこと屡々、自らが作家でもある証拠となる原画など自宅に隠し持つことさえ困難な時代でした。風俗資料館の蔵書の中に印刷物として残された膨大な作品群、そこから伝わる豊かな感性と創造力。多くの読者に夢と希望を与え続けた須磨利之は、時代を越えて今なお人々に愛されています。
     今回の展示では、奇跡的に残された「美濃村晃」名義で描かれた挿絵の原画、そして須磨利之が自らのコレクションとして大切にしていた雑誌の切り抜き(コピー機のない時代ですので、カメラで撮影して「写真」のカタチで保管されていました)、『裏窓』執筆陣が大集合した楽しそうな新年会の写真などをご鑑賞いただきます。普段は閉架書庫に収蔵している稀少な『玲子画帖』『玲子悦虐素描集』『美しき縛め』、カストリ雑誌時代のB5版『奇譚クラブ』等も展示いたします。展示書籍はこの機会にどうぞお手に取ってご覧ください。

    新年会写真――
    是非館内にて裏窓昭和38年3月号掲載の「裏窓湯河原へ行く」とともにご鑑賞ください(左の画像は編集資料であるフィルムのベタ焼き写真です)。


    ■ご入館について――
     風俗資料館内特別展示は別途入場料は必要ありません。ただし、本展示はこれまで数回開催いたしました「会員以外の方も入ることのできる展覧会」ではありません。正会員・準会員・研究者会員・ビジター・夜の図書館といった通常のご入館方法で来館された方のみが、蔵書の閲覧を楽しみつつ、ご鑑賞いただけるものです。会員以外で鑑賞を希望される方は「ビジター」や「夜の図書館」もどうぞ便利にご利用ください。閉架書庫の中で貴重な資料を死蔵させることなく、今の時代に一人静かに本と向き合い空想の世界に浸る時間を大切にされている皆様とともに、本物の作品に触れる喜びと感動を共有いたしたく思います。展示作品の当時を知る方も、初めて見るお若い方も、それぞれに心の奥底の記憶を呼び覚まし、新鮮な衝撃や感動、そして懐かしい安らぎを実感していただければと思います。

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    <喜多玲子・美濃村晃・須磨利之のプロフィール>
     本名須磨利之。京都市生まれ。  画家として最も愛好家の間で知られている筆名は「喜多玲子」であるが、後年になると「美濃村晃」の名前も多く使用した。しかし古い愛好家そしてホンモノの愛好家は「喜多玲子」でなければ承知しない。
     太平洋戦争後、戦地からもどった須磨は、小さなカストリ雑誌を作っている出版社に就職し、そこで発行している『奇譚クラブ』を周到な過程を経て、日本初のSM専門誌に変貌させていく。繊細で優美、情感あふれる「責め絵」を喜多玲子の名前で描き、他にも時代物、歴史物、現代風俗物、ユーモア物など多くの読物のイラストを、それぞれ別の筆名で巧妙に描きわけた。
     やがて東京に移住し『裏窓』を創刊し、のちに東京三世社系の『SMセレクト』をメインとする各誌、サン出版系の『SMコレクター』『アブハンター』『SM奇譚』などに挿画家として活躍し、さらに作家としても多くのペンネームを使い、小説、読物類を書き、愛好家の熱烈な支持を受ける。画家、作家としてのペンネームの種類は多く(*)、とても数えきれず、書ききれない。
     昭和の年号が終わるころ病いを得て闘病生活に入り、平成四年、七十二歳の天寿を全うする。愛好家へのサービス精神を、誠心誠意つらぬいた一生であった。

    (*)喜多玲子/美濃村晃(みのむらこう=マレー語で「ちょっと一休み」=ミノムラコ)/円城寺達/高月大三/今幾久造/竹中英二郎/明石三平/照魔加司(てるまかじ=マレー語で「ありがとう」=テレマカシ)/須賀敏(すがびん=「素寒貧」から)/日吉雛子/猪島昌也(自らのプライベート写真を『裏窓』に掲載する時のカメラマンネーム)等々……


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