風俗奇譚,文献資料刊行会,1963年1月号

    風俗奇譚1963年1月号から1963年12月号まで連載された佐渡好夫氏の翻訳作品『マドモアゼルOの物語』は、本邦初の完訳編とうたわれ人気を博しました。佐渡好夫氏は、そのほかにも数多くの海外エロティック文学を精力的に紹介されました。
    挿絵は田上恵子氏が描かれています。

    初回巻頭に佐渡氏が寄せられた挨拶文より〜この、たぐいまれなるマゾヒスティンの物語、その美しきヒロインの名を、作者はただ、その頭文字であるO(オー)としか、しるしていません。読者の中には、この、ただ符合のようなOに感興をそがれるかたもあるかも知れません。でも、ちょっとOで始まる女性名、たとえば、オデット、オクタヴィア、オラムピア、オリヴィア、なにかそんな美しい名を思い浮かべてみてください。そしてOH(オー)で表現される英語の感嘆詞として、O嬢の魅惑のくちびるをもれる苦痛の、恥辱の、哀願の、また時には押えきれぬ欲情の、あるいは快楽の吐息の表徴と思って、どうぞ最後までお読みください――