第7章 朝の礼拝に遅刻
[石けん浣腸]
フランソワは、ハミルトン先生の前に立っていた。
「どうしました、フランソワ」
「先生、これ……これにサインしてください」
「おやおや、たいへんなものを持って来たのね、サインして上げましょうね。でも、その前にちゃんと義務をはたさなければいけませんよ。さあ行きましょう」
「先生、お願いです。サインしてください。あたし、たたかれてもいいんです。でも……あれはいやなんです」
「さあ、それはどうでしょう。院長先生やほかの先生がたが相談して決めたことですからね。わたしがかってに変えるわけにはいかないのですよ。さあ、わたしについていらっしゃい」
ハミルトン先生はさっさと部屋を出て行ってしまいました。フランソワはしかたなく後ろについて行きました。小部屋のとびらをあけると、《さあ、中におはいり》と言ってフランソワを先に中に入れ、そして自分もつづいてはいると、とびらをピタッと閉じてしまいました。
わずか5メートル四方ほどの部屋ですが、とても明るい感じがしました。まっ白な壁にそってベッドが二台置いてありました。そしてフランソワにとってはじめて見る道具が立っていました。そのほか、ガラスのケースには、何本も大型の注射器のようなものもありました。フランソワは不安でじっと立っていることもできないくらいでした。
「ベッドに上がりなさい」
「先生、教えてください、あたしは何をされるのですか。どんなことを……」
「あなた、はじめてですか。そう、ここに来る生徒のうちニ分の一ぐらいの人は知らないようですね。別にこわがることはないのですよ。痛いこともありません。お祈りをしなさい、いっしょうけんめいに、そうすれば、すぐにすんでしまいますよ。さあ、べッドに上がりなさい」
先生の最後のひと言には、もう抵抗することができないような、きびしさがありました。フランソワはしかたなくベッドに横になりました。そして息を殺して先生の挙動を見つめていました。
ハミルトン先生は湯わかしに手をふれて、そのぬくもりをたしかめ、たなの上から壷をおろし、中から白い粉を器に少量移しました。フランソワは、きっと食塩なんだと思いました。お湯を器にそそぎ込むと静かにかきまぜ、そして水を加えてからもう一度ぬくもりをたしかめているようでした。
「フランソワ、おまえは、初めてのようだから、きょうのところはイルリガートルは使わないことにします。そのかわり、せっけん水を使いますからね。そうすれば、これがどういうききめのものか、おまえにもよくわかろだろうからね」
「はい、先生。どうぞ、あまり痛くないようにしてください」
「おまえには、まだよくわかっていないようね、べつに痛めつけるためにするんじゃないのですよ。おなかの中をからっぽにするのよ。せっけんを入れてきれいにおそうじをするんですよ」
「せっけんを? おなかの中に?」
「そうですよ、ほんとうに何も知らないのね。さあ、横になって右足だけ曲げてごらん」
フランソワが言われたとおりのポーズを取ると、先生はケースの中から器具を取り出して、器の中の液を器具にたっぷりと吸い込ませました。
そして、タオルでつつむようにして左手に持ちました。タオルの先をせっけん液にひたすと、右手にそのぬれた先を持ってフランソワのところに来ました。
「フランソワ、お尻をお出し! 先生は両手がふさがってるの。早くしなさい!」
ハミルトン先生にも、もう何度か裸のお尻を見られてしまっていましたが、たからといって、恥ずかしくないということはありません。やっとの思いで、そっと制服のスソを持ち上げました。
「おまえのお尻はとてもいい形になりましたね。はじめて見た時は、高慢に太っていましたけどね。クリスティ先生にはたいぶたたかれたようね。そのおかげで、心ばかりか、からだも美しくなるのですよ。さあきょうはからだの中まできれいにしてあげようね」
むぞうさに右手に持ったタオルの先をフランソワのお尻にあてがって、キュッ、と強くふいたので、フランソワは思わずとび起きてしまいました。
「いや! 先生、そんなことしないで」
「何をいうの! フランソワ。かってに起きてはいけません。いうことがきけないなら、ベッドに結えつけてしまいますよ! さあ元どおりにしなさい」
先生のきびしいことばに、フランソワはすぐに元どおりのポーズになったのですが、ハミルトン先生は、おしおきを受ける態度が悪いと言って、力いっぱいの平手打ちを二つ与えたのでした。
[先生の目の前で]
「そら、口を大きくあけるのよ。おなかに力を入れないで、いいこと、動いてはいけませんよ」
《あ−っ》思わず悲鳴をあげて起き上がりそうになるフランソワを、先生は左の腕で押えつけて、そして時間をかけてゆっくりとピスンを押しました。そのたびに《グル、グル》とおなかに液が入り、暖かさを感じました。しかし、それよりもフランソワはからだじゅうが燃えるようにほてって、恥ずかしさでいぱいでした。
じゅうぶんに時間をかけて施術を行なったにもかかわらず、先生は、その長くとがった先端をぬき取った後、しばらくそのままの姿勢でいるように命じたのでした。先生がはさみ込んだ綿を右手で押えたままからだを堅くしていました。
しばらくすると、フランソワのおなかの中はたいへんなことになって来ました。グルグルと鳴り、液体がうず巻いていました。
「先生……あたし、あ−っ……お手洗いに行かせてください」
「そうですね、もうそろそろいいでしょう。持って来て上げましょうね」
そう言って先生は、壷型のおまるを持って来ました。子供が使うものと同じ型ですが、少し大きいようです。
「さあ、これになさい」
いつもなら、とても、先生の見ているところなどで、できはしないのですが、今は一刻も早くおなかの中のものを処理してしまいたいので、フランソワは顔をまっかにしながらも、先生の言いつけどおり、その不細工な壷にまたがったのでした。
背後に先生の冷たい視線を感じた時、フランソワの最後に残っていたほんの少しの気ぐらいも、吹き飛んでしまいました。
そして、ようやく終わり、静まりかえった廊下を通って自分の部屋に戻ってからも、からだじゅうがだるく、ロをきくこともできないほど疲れたようでした。
ルイーズも何も話しかけて来ませんでしたが、じっとフランソワのほうを見ていました。しばらく机のところにすわっていたフランソワは、やっと腰を上げ、着替えをすませると自分のベッドに行きました。そして、ベッドにはいる前にルイーズのほうを振り向いて、目を合わせると、小さく肩をすくめ、《終わったわ》とひと言、ポツリと言いました。ルイーズは、
「そう、わりと平気そうな顔をしてるわ。でも、疲れたみたい……さっきはごめんなさいね。あたし、言いすぎたわ」
「もういいの。もう終わったのよ。アデールの言ったとおりだわ。たたかれるより楽だけど、あたしはきらいよ。まだ、たたかれたほうがましだわ。どうしてあんなことするのかしら。あたしたちだけが、どうしてあんな恥ずかしいめに合わされるの、ルイーズ……どうして……」
「フランソワ、もうわすれてしまいなさい、もう、すんでしまったんだから。あたしたちは、ムリヤリここに入れられているんじゃないのよ。お金を払って入れてもらっているのよ……形の上ではね。だから、不服をいうのはよしましょう。言ったところでどうしようもないんだし、それを言うなら、はじめからはいらなければよかったのよ。けっきょくはあきらめてまかせるしかないのね」
「わかったわ、ルイーズ。もうだいじょうぶよ。さあ、寝ましょう。そして、あしたの朝は、この青いキップをクリスティ先生のところに持って行くわ。あたし、ちやんとサインをもらって来たのですもの……」
[天使の歌]
一日の終わりの鐘が夜の空気をふるわせると、院内の明かりがいっせいに消えた。フランソワはベッドにはいってからも、しばらくねつかれなかった。考えれば考えるほど恥ずかしさがこみ上げて来た。
「フランソワ!」
暗やみの中から、急にルイーズの声が聞こえた。それも、フランソワのベッドのすぐそばだった。そんな近くにルイーズがいるとは思わなかったので、フランソワは驚いて、起き上がった。
「フランソワ、起きなくていいわ、そのまま寝ていてちょうだい」
ルイーズは、フランソワの肩に手をかけると、そっと押してベッドに寝かせた。そしてそのまま、自分も腰をおろした。
「だめよ、ルイーズ、しかられるわ」
「平気よ、小さな声で話してれば、ねえ、フランソワ。もしあなたが、いやだったら、いいの。でも、もしよければ話して、さっきのこと」
「だって、あなたは知ってるんでしょ。あのこと。別に、それと変わらないと思うわ。とっても恥ずかしいのよ。わざと恥ずかしいポーズをさせるのよ。それで少しでも反抗的な態度をみせると、ビシ、ビシとたたくのよ。それから、おなかの中に……とってもたくさん。あたし、苦しくって、おなかが破裂しそうだったわ。そして、どうしてもがまんできなくなっちゃうのよ。そうしたら、先生は、オマルを持って来るのよ……ええ、そうよ、先生の見ているところで……だって、がまんできないんですもの……」
話し終わった時、フランソワは泣き出してしまった、ルイーズの手をしっかりとにぎって、
「ごめんなさい、フランソワ。いやなこと聞いちゃって、でも、あたしも知りたかったの。あたしだってこわくって、びくびくしてるのよ」
フランソワが泣きやむまで、ルイーズは背中をそっとさすっていた。そしてフランソワの腰に手を回して、
「フランソワはまたたたかれたのね。だいじょうぶ? 痛くない?」
「ええ、さっきのはそれほどひどくはなかったわ。それよりもルイーズ、あなたのほうこそだいじょうぶだった? ほんとにあたしっていじわるなのね。わざと同じところをたたいたりして。許してね、ルイーズ」
「いいわ。でも、一つお願いがあるの……フランソワ、あたしにキスさせて、ここのところを、いいでしょ」
「でも……どうして」
「だって、とてもチャーミングなんですものきょう、あなたをたたいていた時、だんだんピンク色になって、そして終わりのころは赤くなって、あたしのひざの上でふるえていたあなたのお尻。あの時だってあたし、抱きしめてあげたかったわ。だから、お願い。ね、いいでしょ」
「ルイーズ、おバカさんね。あたし、知らない」
そう言ってくるっと向こうをむいてしまいました。しかし、そのかわり、フランソワのお尻は、ルイーズのほうを向いてしまいました。ルイーズはそっとベッドからおりて床の上にすわると、フランソワの夜具をそっともち上げ、そして寝巻きのすそをまくり上げてしまいました。
フランソワは、からだを堅くしてじっとしていましたが、ルイーズの手がドロワースにふれた時、小さな声で〈ルイーズ〉と叫びましたが、それでも手で顔を隠してじっとしていました。ドロワースもルイーズの手でひざのところまで引き下げられてしまいました。暗やみのなかに、フランソワの丸いお尻がほんのりと白く浮き立って見えました。ルイーズはたまらず、くちびるをふれてしまいました。小さなため息がフランソワの口からもれ、ルイーズは何度も何度もくちづけをくり返しました。
しっかりと腰を抱いていた右手が、次第に前のほうに回って、暗やみのなかでフランソワは、自分の手で自分の口をしっかりと押えていました。手をはなせば大きな声を出してしまうでしょう。からだの中は火がついたように熱くなってきました。心臓が今にもとび出してしまいそうな勢いで、からだじゅうの血をぐるぐると回していました。
そしてフランソワは、天使の歌を聞いたのでした。気を失ったように夢と現実のなかをさまよいながら、次第に眠りのなかにひきずり込まれていってしまいました。
ルイーズも、心地よく疲れたからだを引きずるようにして自分のベッドにもぐり込みました。ほてったからだを冷たい夜具が気持ちよく冷やしてくれます。からだが重く重く、沈み込んで行くようでした。
[鐘の音は起床合い図]
フランソワは、まだ雲の上にいるようでした。からだがふんわりと浮き上がったように気持ちよく、ずっとこのままでいたいと思いながら、遠くのほうで聞こえる天使の鐘の音に耳をすませていました。
鐘の音はだんだん小さくなって聞こえなくなってしまいました。雲がきらきらとかがやき、まぶしいくらいでした。と、その時、なにか大きな音がして、フランソワはすうーっと現実に引きもどされて来ました。
「フランソワ! ルイーズ! 何してるの? おくれるわよ。早くしなさい。鐘はもうとっくに鳴り終わったのよ。さあ、早く早く、あたし、もう行くわよ!」
ぼんやりと部屋の中を見回したフランソワがはじめに見たのは、大急ぎでベッドから飛び出して来たルイーズの姿でした。
「フランソワ、早く起きて、あたしたち遅刻しそうよ」
ルイーズはそう言いながら、てきぱきと着替えをすませていました。ようやくその事態に気がついたフランソワも、あわててとび起きると着替えにかかりました。
「ねえ、ルイーズ、あたしたちどのくらい遅れてるの」
「さあ、わからないわ。でも今アデールが行ったんだから、なんとか、まにあうと思うけど、いそがなくちゃだめよ」
制服の胸には、小さなボタンが十二もついていました。あわてているフランソワはなかなかうまくボタンがかけられません。そのうちにルイーズは自分のベッドを直して、フランソワのほうもやってしまいました。
「フランソワ、下着を早くぬいでこの中に入れなさい。早く」
「だってボタンがかからないのよ」
「こっちに来て、早く」
そう言いながらルイーズは、フランソワの制服の中へ手を入れると、ドロワースのひもをほどきにかかりました。ぐっと下まで引きずりおろすと、
「早く足をぬいてよ。足を上げて!」
ようやく下着を取り上げると、きちんとたたんでカゴの中に入れました。そして、フランソワといっしょに大急ぎで洗面所に向かったのでした。しかしそこにはもう誰もいませんでした。
ふたりは髪だけ直すと、いそいで礼拝堂に向かったのでした。大急ぎで行ったにもかかわらず、重い鉄のとびらはきっちりと閉ざされていました。
そのとびらの前には、ひとりの先客がいました。ハミルトン先生のところにいた生徒です。ふたりはその後ろに並びました。
[遅刻したのは三人]
後ろをふり向いた生徒は、悲しそうな顔でふたりを見上げました。
「マリー・クローリーじゃない、あなたみ遅刻?」
「ええ、あたしの目の前でとびらがしまったのよ。ひどいわ、もう少しでまにあったのに」
マリー、と呼ばれた娘は、これから起こる事態を思い、目に涙をうかべて話していました。
「きょうはお休みなのにね」
「そうね、きょうは土曜日だったわね。マリーはどうしたの? おねぼうしちゃったの?」
「ちがうわ、ちゃんと起きたんだけど……」
「じゃあ、どうしたの」
「あたし……どうしてもドロワースのひもがほどけなくって、なかなかほどけないのよ……」
「だったらそのまま来ればいいじゃない。遅刻するよりはましよ」
「ええ、あたしもそう思ったわ。同じしかられるんでも、そのほうがいいと思って。だから、あわてて来たんだけど、だめだったの」
「あら、それじゃマリーちゃんはまだ下着をつけたままなの?」
「ええ、そうよ、だから困ってるの」
「ねえ、マリー、あなたがここに来てからどれくらいたつの」
「そうねえ、お祈りが半分終わったくらいかしら?」
「それじゃ、こっちを向いてごらんなさい、あたしがやってあげるわ」
ルイーズはマリーの下着のひもをほどいてやりました。
「どうしてこんなに堅く結えちゃったの」
と言いながらも、器用に指先を動かして、すばやくほどいてやりました。
「さあ早く行ってらっしゃい、まだまにあうわ」
マリーは大急ぎで自分の部屋に下着を置きに戻りました。そして再び戻って来た時、ほとんど同時にとびらのカギが回って、ドアがほんの少し開きました。十分ぐらいのお祈りが終わって、これから院長先生のお話です。遅刻した生徒は、この間に静かに中にはいることを許されるのです。
三人は音をたてないようにそっと中にはいると、いちばん後ろの席に三人並んで腰をおろしました。
院長先生の話を聞きながら、ルイーズは、きょうは少しばかりゆううつな日になりそうだな、と思っていました。フランソワの頭の中は、きのうのことや、これから起こることを考えて、今にも破裂してしまいそうでした。しまいには、ぼうっとして先生の話も聞こえないくらいでした。
マリーちゃんは、片一方のことがしかられずにすんで、ちょっとほっとしていました。
院長先生の話が終わると、再び短いお祈りがはじまります。そして最後は、賛美歌です。朝の礼拝のはじまりは、朝の礼拝の歌で始まります。しかし最後の歌は、毎日ちがう歌が歌われるのです。きょうはこの歌でした。
一、しのべ、しのべ、世にありては なやむは神の、みむねなれば
二、なやみ主の、子らを清め いたみは神の、民をきたう
歌い終わると生徒たちは、静かに礼拝堂から出て行きます。みんながそこを出て食堂にはいってしまってから、遅刻した生徒はそれぞれのクラスの先生に連れられて、自分の部屋に戻りました。マリーはハミルトン先生に連れられて、そしてフランソワとルイーズはクリスティ先生に連れられて、自分の部屋にはいったのでした。
「そこに立っていなさい!」
そう言ってクリスティ先生は、部屋の中を見て回りました。まずルイーズのベッドに近づくと、カバーをさっとはね上げました。きれいになっていたようでしたが、中のシーツは乱れたままになっていました。ルイーズは下を向いてしまいました。そして、フランソワのベッドも同じように、いちばん上のカバ−だけがきちんとして、中は乱れたままになっていました。
「けさはだいぶあわてたようですね。どうしてなの? あなたがたがここに来てから、朝の礼拝に遅れたのははじめてですね。どういう理由か話しなさい!」
「きのう消燈してから、あたしとフランソワはお話をしていたのです、それで……」
「どのくらい話してたの?」
「かなり長く……話してたと思います」
「消燈後の私語は禁じられているばずです。あなたたちは、それを忘れてしまったの?」
「申し訳ございません……フランソワが……青キップにサインをもらって来ましたので、あたしがそのことをいろいろ聞いたりしたものですから。それで……」
「いいえ、先生、あたしが取り乱していたので……それで、ルイーズがなぐさめてくれたりして、それでおそくまで話をしてしまいました。あたしが悪いのです。先生、お許しください……」
「わかりました。とにかくふたりは消燈後に長々とオシャベリをしていて、けさの礼拝に遅れたのですね。それでは院長先生に報告に行きます。おまえたちはこの部屋から出てはいけませんよ、いいね」
[まず平手打ち20回]
先生が出て行ってから、三十分も過ぎたころ、急に部屋の外がにぎやかになりました。
「みんなが帰って来たわ。いいわね、あの人たちは、きょうはお休みなのよ」
それからさらに十分くらいすると、生徒たちはみんな森へ遊びに行ってしまったらしく再び静かになりました。コツ、コツ、と足音が聞こえ、とびらが開きました。
「わたしについていらっしゃい」
ふたりはクリスティ先生について外に出ました。歩きはじめると、左側の廊下からハミルトン先生に連れられたマリーがやって来ました。先生がたはふたり並んで歩き、その後ろに三人の生徒がついて行きました。そして院長先生の部屋の前を通って、小会議室まで来て、中にはいりました。
そこには、もう院長先生とマーブル先生がすわっていました。
「生徒を連れてまいりました」
クリスティ先生がそう告げて、ハミルトン先生ともどもイスに腰をおろしました。
「三人は前に来なさい。マリー、フランソワ、ルイーズの三人ですね」
「はい、先生」
「ハミルトン先生、マリーの遅れた理由は、さきほどうかがったことにまちがいはないのですね」
「はい、院長先生、同室の生徒もそのように申しておりました」
「わかりました。フランソワとルイーズはクリスティ先生に話したとおり、まちがいはないのですね」
「はい先生」
「よろしい、それではハミルトン先生とクリスティ先生、お立ちください。わたしが指示いたします」
先生がたが立ち上がると、院長先生もお立ちになって、
「両先生がたに命じます。朝の礼拝におくれた三人の生徒に、まず二十回ずつの平手打ちを与えるように。それからマリーには、身だしなみがきちんとできるように、きらに二十回。ただしこれは昼と夕方の礼拝のあとに十同ずつ与えなさい。それから、フランソワとルイーズ、消燈後の私語は堅く禁じられています、そのために遅刻などは諭外です。したがって、二十回ずつの笞打ちを命じます。マリーと同様、昼と夕方の礼拝のあとにこの場所で行ないます。笞は枝笞を使うように。三人ともきょうは部屋から出てはいけません。フランソワとルイーズには、きょうは水だけを与えるように。マリーも朝と昼は食事を与えないように。夕方にはパンと水を与えなさい。以上です」
「かしこまりました、院長先生。それでは、さっそく生徒たちに義務を果たさせるようにいたします」
最初にマリーが、小会議場のまん中に引きずり出されました。ハミルトン先生は、自分のすわっていたイスを持って来ると、どっかと腰をすえ、ひざの上にマリーを横抱きにかかえました。
制服のスソを高々とまくり上げると、マリーの丸まっちいお尻は、すっかりむき出しになってしまいました。
ハミルトン先生の大きな手のひらが、ビシッ、ビシッと力いっぱいにたたきはじめました。二つの半球をかわるがわるたたくので、マリーは足を左右にけってなんとかのがれようとしましたが、ハミルトン先生の正確なお尻打ちから、のがれることはできませんでした。
ようやく終わった時、マリーのお尻はちょうど十回ずつたたかれて、二つの半球は同じように赤くはれ上がっていました。院長先生は黙ってうなずくと、クリスティ先生のほうを向いて、
「では先生、次の生徒をお願いします」と言いました。
ふたりの生徒は、キュッとからだを堅くし下を向いてしまいました。