「尼寺 戒月院」 2
 著 Q太

千里が恐ろしい尼寺に連れて行かれてから10日が過ぎた。
あの日、クタクタになって家に着いてからも母親は座敷で正座をさせ千里にネチネチ
とお説教をした。
「千里、今日のことを忘れるんじゃありませんよ。お母さんは今まで千里を甘やかし
ていたと後悔していますからね。これからは今まで以上に厳しく躾をしますよ」
「・・・・」
「お返事は?」
「ハ、ハイ」
「小さな子ならいざ知らず、もう分別のつく歳なんですから、口で言って分からない
子にはお仕置きしかないって言う事です。少し辛くても千里のためを思えば今のうち
にちゃんとしておかないとね」
千里は俯いたまま、じっとお小言を聞いていた。
「それから、オナニー。絶対いけませんよ。何処でそんなふしだらな事憶えたの! 
二度と許しませんからね! 当分は毎日下着検査をしますから、毎晩お風呂の前にお
母さんのところへ来なさい。まったく、躾と思って自分の下着ぐらいは自分で洗わせ
たのが間違いだなんて思ってもみなかったわ」
「ごめんなさい・・・」
千里は身体を縮ませ小さくなって俯くしかなかったし、何より早くお説教を終わらせ
てもらい、火傷の手当てをしたかった。こうして叱られている今もスカートの中はズ
キズキと痛みが続いていた。
『もう分かりましたから、早く終わらせて』心の中で千里は呟いた。
母親は大学ノートを一冊目の前に置いた。
「これからはどんな些細なことでもこの閻魔帳につけて置きますからね。それで月に
一回第一金曜日に今日のお寺に行くのよ。一ヵ月分のお仕置きをたっぷりして頂きま
すからね。それとは別に家でのお仕置きも今まで以上ですよ。忘れないでね」

よほどお仕置きが堪えたと見えて、千里は一週間緊張した日を過ごした。
千里は父親の顔をほとんど覚えていない。もちろん顔を知らない訳ではなく、仏壇に
若い父の写真が置いてあるので、ハンサムだった父の顔は毎日のように見ている。
以前、母から聞いた話だが父と母は大恋愛で結婚したそうだし、今住んでいるこの家
も元々は父の実家だ。
千里が物心ついた頃には、祖父は亡くなっていたが祖母は元気だった。その祖母も今
はいない。

母は千里が幼い頃甘やかして育てた。祖母から『もっと厳しく躾ないと、後々困った
事になるよ。どうすれば良いかは良く分かっているはず』と度々注意されたが、父と
の間に生まれた子に厳しくなど出来ない。
それが、そうも言っていられなくなったのは、やはり父が事故で他界してからだ。
『あの家は片親だから・・』と言われるのは母親には耐えられない言葉だったし、大
切な娘ならなおさら、ちゃんと育てなければと言う思いは強くなった。
千里が幼稚園までは、ほとんど手も上げたことの無かった母が、小学生になると時々
厳しく叱ることがあった。
母は「もう小さな子供じゃないんですから、厳しくします。良いか悪いかの判断がつ
くようになって悪い事をするのは、分かっていてやっている事です」といつも言って
いる。
理屈はそうかもしれないけれど、お仕置きは小さな子供の頃じゃないの?と千里はい
つも思っていた。
最初はパンツの上から手でお尻叩き。いつからかパンツを下ろされるようになり、ス
リッパやお裁縫の物差しで叩かれるようになった。
初めてお灸をされたのは小5の時で足の指と指の根元に据えられた。最近はほとんど
お尻だ。
それでも普段の母は、どう見ても過剰なほど千里を可愛がった。聖母の母と鬼の母、
その落差の大きさに千里は戸惑うこともしばしばだった。

怒った時の母がどれほど怖いか分かっていても、そんな母だから、ついつい気が緩ん
でしまう。
あれほど酷いお仕置きをされて反省しても、火傷の痛みが引いてくると徐々に緊張感
が薄くなってしまうのは仕方ない。
それでも、毎晩の下着検査は続いていた。夜、お風呂に入る前には千里は母の所へ行
き検査を受けた。
「さあ、今夜はどうかしら? はい、パンティを脱いで」
決まりとは言え、中学2年にもなって母にパンティを見られるのは屈辱だったが仕方
がない。スカートに手を入れるとスルッと脱ぎ母の顔を見ずに渡したが、本心は恥ず
かしさで顔を真っ赤に染めていた。
母は受け取ると、その小さな布を裏返し灯りの下で丹念に調べる。
「千里ちゃん、この黄色いシミは何? お小水の後はきれいに拭きなさいって言って
あるでしょう。女の子ですから、ここは特に清潔にしなければダメなのよ」
新しい下着を渡され、スカートの上からポンとお尻を叩かれお風呂場へ向かう日が続
いていた。
『こんな事でも、少しは心の引き締めになるかしら』母親は赤い顔の千里に当然気が
付いていた。
それとは別に、今週目に入って朝寝坊が二日あった。目覚まし時計が鳴っても起きら
れず、母に、布団を剥ぎ取られ大慌てで支度をして学校へ行った。
『ちょっと変だわ』と母親も思ったが、遅くまで勉強をしていることも知っていたの
で、あまり気にも止めなかった。その日の夕方までは・・・。

「ただいまー、お母さんこれ先生から」
学校から帰ると、千里は何も知らずにいつものお知らせだと思って、先生からの手紙
を渡した。
今月になって、千里さんが3回遅刻・・・中を読みながら、母の顔が徐々に険しくなっ
た。『何て事でしょう』
「千里ちゃん、千里! ちょっと奥の座敷に来てちょうだい!」
「なに? どうしたの?」
それでも千里は何も気づいていなかったが、座敷の襖を開けて母の顔を見たとたん只
事でない事はすぐに理解した。
「そこに、お座りなさい」
「お母さん、どうしたの・・・?」
「どうしたのじゃないでしょう。これは一体どう言うことなの?」
母は脇の座卓の上から先ほどの手紙を取り、広げながら千里の前に置き、その上を
2,3度慌ただしく叩いた。
「今月になって3回も遅刻ですって? どう言う事なのか言ってごらんなさい。遅刻
はこの前の事と違ってお友達のせいには出来ませんよ」
千里はハッとして母の目を見つめたが、言い逃れを出来る状態ではなかった。
「お、お母さん、ごめんなさい。今日もそうだったけど、朝起きられなくて・・・、
急いだのよ・・、学校まで走ったし・・・でも、間に合わなくて・・・」
「一生懸命やっていますなんて言い訳は通じません。遅刻は遅刻ですからね!」
「・・・でも、・・・」
「どうされるか分かっていますね! 膝へ来なさい!」
千里は母親に腕をつかまれ、ズルズルと引っ張られながら正座をした母の膝の上に身
体を乗せられスカートを捲られた。
「いやー、ごめんなさい。もうしません・・」
「もうしませんじゃありません。してしまった遅刻のお仕置きですよ。素直に出来な
いと酷いことになりますからね!」
母親はそう言うと、手早く千里のパンティに手をかけスルリと太腿まで下ろし、滑ら
かなカーブを描く千里のお尻が剥き出しになると優しく手を置き擦った。
「悪い娘の躾には、どうしてもここをお仕置きしないといけないわね。今日は痛くし
ますよ!」
擦っていた手が急に振り上げられ、お尻に叩きつけられた。
ピシャン! ピシャ!
「ああ、ごめんなさい・・ 痛いー!」
思わずお尻に手をやったが、母親は千里の腕を背中にねじ上げ、お尻叩きを続けた。
ピシャ! ピシャ!
「痛い、痛いよー! 堪忍してー・・・」
容赦の無いお尻叩きに、千里のお尻の肉が震え、その度に赤味を増して行く。
ピシャ! ピシャン!
「ああー、お願いです。もうしません、もうしませんからー・・・」
千里の哀願には耳を貸さずに、母親は正確に左右の丘を打ち据えた。
千里のお尻がすっかりトマト色になった頃、母親は膝の上から千里を落とした。
「さあ、あそこに台にうつ伏せに寝てごらんなさい!」
母親が指差した先には、座敷の隅に置かれた座卓が置かれてあった。
「お、お母さん。もう、もうしませんから・・・」
母親は、部屋の隅に立て掛けてある竹の物差しを手にすると、ゆっくり千里のお尻に
当て、ゆるくピシャピシャ叩きながら、千里を台まで追いやった。
「台にうつ伏せになりなさい! 早く!」
母親のいつもと違う剣幕に、しぶしぶ千里は台の上に上半身を横たえると、剥き出し
になったままのお尻に物差しが当てられた。
「いいですね。お母さんはどうしても千里を言い子に躾なければならないのよ。世間
では、もうすぐ一人前の扱いをする年ですけど、このままじゃ何時までたっても子供
のままですからね。どうしてお仕置きをされるか、良く考えてごらんなさいね」
空を切るビュと言う音とともに、強烈な痛みが千里のお尻を襲った。
「イィィィー! ごめんなさい! ごめんなさい〜!」
お尻が浮き上がり、ブルブルと震えたが母親は赦す気配さえ見せない。
「じっとしなさい! 暴れると縛ってしまいますよ」
ビシッ! ビシッ!と左右のお尻に打ち込まれる痛みは、この前初めてあのお寺であ
じわった痛さと同じだった。
「アヒィィィー! もう、もう堪忍してー!」
千里の願いは聞き入れられず、2ダースの物差しの後ようやく母親が手を止めた。
「どんな理由があっても、二度と遅刻は赦しませんよ。分かりましたね!」
ようやく赦され、赤く染まったお尻の上に何条もの濃い赤の線を付けたお尻を千里は
擦った。パンティを上げるだけでヒリヒリと痛んだ。
「さあ、さっさと部屋に戻って勉強をしなさい。もう遅刻しないように早く寝るの
よ」
この鬼のお母さんが、明日の朝には何もなかったように優しくなる。千里にはそれが
理解出来なかったが、今は間違いなく鬼だと思えた。
部屋に戻った千里は、恐る恐る椅子に座ってみて飛び上がった。
『イツゥゥゥ! こんなにしなくても良いのに・・・』
それでも、言われた通り勉強はしなくてはならない。苦痛に耐えながら椅子に腰を下
ろし宿題を始めるしかなかった。

こんなにお仕置きをされても、千里は少しホッとしていた。遅刻には訳がある。
あれほどオナニーは禁止と言われ毎日下着検査をされていても、あのお寺でお灸を据
えられて以来、火傷の手当てに毎晩お薬を塗らなければならない。
辛く悲しい手当てをしているのだが、そこに手をやりお薬を塗り込んでいるとどうし
ても変な気持ちになってしまう。
下着検査をされているので楽しみは深夜のベッドの中、お布団の中でパジャマと下着
を下ろして密かに行う。当然使ったティシュは、その日の内にトイレで流さなければ
ならない。
その晩も、勉強をおえてお風呂に入りベッドにもぐり込んだのは深夜だった。
こんなお尻になってしまって、早く寝ようと思っていたがお尻を擦っていると自然に
手が前に滑り込み自分を慰めた。
『どうしてこんな事に? でも気持ち良い・・』
いつものように下着に跡が残らないようパジャマとパンティを下ろしティシュをベッ
ドの
中でお尻の下に敷いて手をやると、さっきのお尻の痛さを忘れる、めくるめく快感が
千里を襲った。

『ああ、どうしよう』そう思った瞬間、部屋の電気が点けられ否応無しに布団が捲ら
れた。
「千里! 何をしているの!」
そこには惨めに言い訳も出来ない下半身裸の千里がいた。
「あ、あ、イヤ〜!!!」
とっさに布団をかぶろうとしたが、母親はそれを赦さなかった。
何度も布団をめぐって力のやり取りがあったが、結局は母親が布団を捲り上げて勝負
はついた。
下半身を裸にした千里には何の言い訳をする余地もなくベッドの中で身体を丸くし
た。
「何をしているの・・・、言ってごらん!!」
「・・・・、ごめんなさい・・・・」
「そんな事聞いていません! 何をしていたの!」
「・・・・・・・」
それから後は、もう言葉がなかった。
千里は、ほとんど記憶がないまま下半身裸のまま引きずられ、さっきの座敷に連れて
来られていた。
真夜中で深々と静まり返った座敷に灯がともり部屋に二人の姿があった。
「ああ、お母さん・・・」
「何も言わなくていいよ! お母さんは何も聞きたくありませんからね! さあ、も
う一度台の上にうつ伏せになりなさい!」
台の上に黙って身体よ横たえる千里を横目で見ながら、母親は箪笥の中から紐を取り
出して台の横に投げ出した。
何も言わない母親は、紐を解くと千里の手首に巻きつけ台の足に縛りつけた。両手を
縛り終わると、続けて足の方に廻り跪いている膝に紐をかけ手荒く足を広げさせて両
足も台の
脚に広げて縛りつける。
「ああー、お願いです、お願いですから、今度だけは・・・・」
「お黙りなさい! オナニー娘の言う事なんて何も聞こえません!!」
縛り上げてしまうと、母親は隅の箪笥から艾の袋とお線香を取り出し、千里のお尻の
前に座った。
千里には何も見えなかったが、ガサガサと袋を開け音か聞こえ、お線香の香りが漂っ
た。
「お母さん、お母さん! お願いです! お願いですから・・! お灸だけは堪忍し
てくださいー! もう、もう絶対しませんからー!」
「千里のもうしませんは何度聞かされた事ですかね? さっきもそう言ったんですよ
! 口先ばかりで、ちっともいい子になれないならお灸です! 泣いてもダメ! お
尻をうんと熱くしてお仕置きします!」
トマト色に赤い筋がついたままの千里のお尻に、母親は小山にした艾を左右に一つず
つ置いた。
「まだ触っただけでも痛いでしょうから、今日のお灸はきっと良く効きますよ。さ
あ、お線香の火が点きましたからね! よく反省なさい!」
「あ、あ、あぁぁ〜、アツっ! 熱いー! 熱いよー!! 堪忍! 堪忍してー! 
熱いー!! ごめんなさいー!!」
千里は何度かお尻にお灸を据えられていたが、今日の熱さは格別だった。お尻叩きと
はまったく違う、長く続くお灸の火がジワジワと千里の腫れ上がったお尻に沁み入っ
た。
いつ果てるとも知れない煉獄の熱さに、千里は悲鳴を上げながら腰をよじり、身をく
ねらせて哀れなお尻を左右に振ったが、それ以上は何もできなかった。
母親は、黙って小さな山の艾を次々に作っていた。
ようやく熱さが遠のいた時、千里の喉はカラカラに渇き、額には脂汗が浮かんでいた
が、そんな事にはお構いなしに、母親は次の二つの艾を同じ場所に置いた。
「お願い・・、お願いですから、堪忍してください。我慢できません・・、我慢でき
ませんから・・・、もう、もう赦してください・・・。あッ! あああぁぁぁー! 
熱いー!!」
「我慢できないのよ! 我慢できるお仕置きなんて無いの。あれだけ言っておいたオ
ナニーなんかするから、こう言う目に合わされるんです! もっと熱がって反省なさ
い!」
三度目のお灸のとき、あまりの熱さと苦しさに、とうとうお洩らしをしてしまった。
母親は手荒く手ぬぐいと雑巾で後始末をし、千里はその間だけ一時の休息を与えられ
たが、
始末が済んでしまうと、お灸が続行された。それも今度はお洩らしまでもがお仕置き
の理由に加えられて・・・

六度目のお灸がようやく終ると、千里は涙と汗で目の前がかすみ、部屋中がグルグル
回っているように思えた。もう何の言葉も思い浮かばず、ただただ「ごめんなさい」
を喉の奥から搾り出しているだけだった。
「千里! 少しは懲りましたか? もう、オナニーなんかしないって約束できますか
?」
「や、約束します・・・。もうしません・・・」
ようやく手の紐を解かれながらも千里の心は宙に浮いていた。何処からともない遠く
からお母さんの声が聞こえ、何度も響いている。
『これでお仕置きを赦すわけにはいきませんよ! この前から一ヶ月経っていないけ
れど、明日は戒月院へ行きますからね。院長先生にお願いしてお蔵に入れて頂きます
から、今から覚悟をしておきなさい』
遠くの声が何度も響き、遠のいていった。

二部 完

つづく

戻る