第26話 by 多香美じかん
由梨子と静江はそのまま車に乗せられ、悟と宇田川のア
ジトへ連れてこられた。
店の中に放り込まれると同時に、由梨子と静江はそれぞ
れ、ネグリジェとバスローブを剥ぎ取られて、
両手を高々と吊り上げられ、爪先立ちの状態で、
並んで立たされた。
静江が丸裸なのに対し、由梨子の体には、まだパンティ
ーが残っていた。
悟が得意の裁縫用大はさみで、その薄いレモン色のパン
ティーを切り裂こうとすると、由梨子は狂ったように身
をよじらせ、悲鳴をあげた。
それを見て宇田川が、薄笑いを浮かべながら、
「由梨子さん、隣のお母様をごらんなさい。
かわいそうに素っ裸にされているでしょう。
お母様だけにあんな恥かしい思いを
させておくつもりですか?」
と言った。
由梨子がふと見ると、静江は打ちひしがれたように
首を前に垂れさせ、哀しげに目を伏せていた。
「お、お母様・・・。」
由梨子が、母親の、そのあまりにも哀れな表情に胸を
締付けられた瞬間、悟のはさみがシャキッと音をたてた。
薄いレモン色の布が床に落下し、
由梨子はつんざくような悲鳴をあげる。
「ついに白川母娘を素っ裸に剥いたぜ。」
「由梨子さんのヌードを見るのは初めてですね。」
宇田川と悟は痛快そうにそう言い合い、
静江と裸身と由梨子の裸身を舌なめずりしながら
眺めるのだった。
静江の、柔軟で悩ましい曲線が官能味を匂わせる裸身と、
由梨子の、細くてしなやかな曲線で取り囲まれた象牙色の
裸身は、どちらも無残に吊り上げられ、まさしく生贄のご
とく、悟と宇田川の前に晒されている。
悟と宇田川は、その、吊るされた美しい肉体のあらゆる部
分を見比べ始める。
静江の、熟れ切って情感を湛えた乳房に対し、
由梨子の、匂うような色気の中にも白桃のような可憐さが
感じられる、形の良い乳房。
静江の、艶やかな腹部の縦長の臍に対して、
由梨子の、薄いなめらかな腹部の丸い臍。
宇田川と悟の、ギラギラとした視線は次第に下へおりて
行き、秘部を覆い隠す草原に釘付けとなる。
静江の、ふっくらと盛り上がって生暖かそうな繊毛と、
由梨子の、淡くて繊細な若草を思わせる綺麗な繊毛。
宇田川は思わず由梨子の前にしゃがみこみ、その茂みを
マジマジと見つめ出す。
由梨子は吊られた体を必死によじらせながら、宇田川の
気色悪い視線から逃れようとする。
宇田川はその動きを止めるため、由梨子の腰に抱きつく。
「いやっ、やめて!」
宇田川は由梨子の股間に顔面を埋め、その茂みの中に鼻先
を突っ込む。
「ああっ、いやーっ!」
由梨子の悲鳴を心地よく聞きながら、息を思いきり吸込ん
だ宇田川だったが、このとろけるような繊毛が、あの糸崎
の、粗い密毛と幾度となくこすれ合っていたのかと思うと、
口惜しくて酸鼻な思いがこみ上げてきて、
顔を股間から離して立ち上った。
由梨子への恋心は、もう憎しみでしかないのだ、と宇田川
は改めて実感した。
すると、悟も、宇田川を真似て静江の股間に顔面を埋めて
いた。眉をしかめて身悶えている静江の体からは、
風呂上がりの石鹸の香りが、ほんのりと匂いたち、
悟は、殺気立った雰囲気であるにもかかわらず、
妙にうっとりとしてしまう、不思議な感覚に浸っていた。
その空気を打ち破るように、由梨子が口を開く。
「道代さん、あなたもグルだったのね。」
恐怖と屈辱に震えながらも、道代への怒りを露骨に現す
由梨子。その気丈さが、宇田川や悟の特殊な性癖を大い
に刺激する事を由梨子はいまだにわかっていなかった。
黙ったままの道代に代り、宇田川が由梨子に言う。
「グルだなんて、由梨子さん、
まるで俺達が悪党のように
聞こえるじゃありませんか?
もう一度はっきり言っておきますが、
俺達が正義であり、
悪いのは、由梨子さん、あなたなんですよ。」
「こ、こんなひどい事をして、何が正義なの!?」
「あー、それもおかしい。ひどい事をしたのは、
由梨子さんの方です。
これは、由梨子さんのしたひどい事に対する
復讐です。
この期におよんで、
まだそんな事おっしゃるのですか?」
「よ、よくもそんなに
ペラペラと勝手な事が言えるわね。
勝手な逆恨みじゃないの!
誘拐して、乱暴して・・・、
あなた達のしている事は犯罪なのよ!」
そんな由梨子と宇田川の言い合いに、悟が、静江の
股間から顔を離して、参加する。
「由梨子さん、
この間、1回、お仕置きをサボったから、
随分と威勢良くなりましたね。
あなたっていう人は、本当に、いつまでたっても、
どれだけお仕置きを受けても、
いっこうに懲りない、筋金入りの馬鹿女ですね。」
「自由を奪った女に暴力をふるうなんて、
あなたたちは人間の屑だわ!」
怒りと悔しさで、涙がこみあげる由梨子。
「奥様、なんですか、娘さんのこの態度は?」
宇田川が静江に視線を移してそう言った。
静江は、うつむいたまま何も言わない。
「なんとか言わねェかっ、おらっ!」
宇田川が怒鳴る。
「申、申し訳ありません。」
静江は怯えた口調で、娘の態度を詫びる。
「お母様、どうして謝るのっ!
私達が何をしたというの!
こんなひどい事ばかりされて、
どうして謝らなければならないの!?」
間髪入れずに悟が、
「謝るのは当然でしょう?
あなたたちは、自分の犯した罪の罰を受けるのが
嫌だからといって、僕や宇田川さんを殺そうとし
たんですから。」
と言った。
静江がハッとしてように顔をあげ、由梨子が顔をひきつら
せる。
すると宇田川が、
「俺達を闇から闇へ葬ろうとしたそうですね、奥様。
ちゃんと、この松下くんのお母さんが聞いていた
んですよ。あなたたちの悪だくみを。」
と低い声で言う。
由梨子と静江は得体の知れない恐怖を感じ、ガクガクと
震え出す。
悟が、
「人を殺そうとしておいて、
どうして謝るの?
は、無いんじゃないですか、由梨子さん。」
と言うと、宇田川が、
「でも、謝って済む問題でもありませんよ、奥様。」
と言って、二人の怯える表情を楽しむ。
さらに宇田川が続ける。
「お嬢様は社長の力で俺を左遷させるし、
奥様は奥様で、これまた社長の力で俺を殺そうと
する。
汚い事はみんな社長にさせて、
自分たちはぬくぬくと生きてゆく。
綺麗な顔してるのに、
腹の中は薄汚いですね、お二人とも。」
宇田川に何か言い返そうとするが、
何も言葉が出てこない由梨子。
静江は真っ青な表情でうつむいている。
「だいたい、社長夫人だとか社長令嬢だとか言って、
あなたたちが偉そうな顔して威張ってるのが
そもそもおかしいんですよ。
偉いのは社長であって、
あんたたちはその人の女房だったり娘だったりする
だけなんだから。
あなたたちは別に偉くないんですよ。
それなのに社長と同じように威張る。
僕はあなたたちみたいな女が一番嫌いなんだ。」
悟が胸に秘めていた根源的な恨みを爆発させ始めた。
「綺麗な顔して、
人を殺す事なんかなんとも思わないんだから、
恐ろしいですよ、僕は。
奥様、あなた、僕や宇田川さんの事を悪魔だと、
罵ったそうですね。
冗談じゃありませんよ。
・・・悪魔はお前達じゃないかっ!」
突然怒鳴る悟。
道代も呆気にとられている。
悟の言っている事はもう無茶苦茶な論理だったが、
由梨子と静江にはもう反撥する気持ちはなかった。
この男たちが、自分たちが彼らを殺そうとしていた事を
知っていた、という事実が、由梨子と静江を恐怖の暗闇
に突き落としたのだ。
これから自分たちはどんな恐ろしい目にあわされるの
だろうか。
由梨子と静江は吊られた裸身をさらに激しく震わせるので
あった。