<A Fanciful Story>
竜巻岬《7》
【第二章:幼女の躾】
K.Mikami
《幼女から童女へ》
次の日、アリスはハイネがすぐにでも自分をお仕置き部屋へ連れていくもの
と思っていた。ところが、朝食がおわってもその気配がない。いつもの日課が
いつものように繰り返されるだけなのだ。お昼近くになりたまらずアリスの方
から尋ねてみた。すると、
「ん、そうね、あなたはいいわ。聞くところによるとリサがあなたを図書室
へ強引に引っ張っていったらしいし、それに私たちも部屋の鍵を掛忘れたり、
おしゃべりに夢中になってて部屋に戻るのが遅れたりしたからあなたたちだけ
の責任じゃないのよ」
「でも、私たちが悪さをしなければハイネだって鞭で三ダースもぶたれずに
すんだんですもの。やっぱり私には罪があると思うんです。もう覚悟はできて
ます。どんな罰でも受けます」
アリスは思い切って告白した。彼女としても自ら罰を受けたいと申し出たの
は人生でこれが初めてだったのである。
「そう、そこまで言うのなら話すけど、実はペネロープ様があなたのお仕置
きを免除してくださったの。それにリサの受けたお仕置きはとても厳しいもの
なのよ。せっかくペネロープ様が免除してくださるんだから、好意には甘えて
おいた方がいいわ」
「でも、それじゃ嫌なんです。ハイネさんにもリサさんにも悪いし、何より
私が仲間はずれにされたみたいで…」
「そう、わかったわ。それならペネロープ様に話してみるけど、あとで後悔
しても知らないわよ」
こうしてハイネはペネロープに相談に行ったが、その答えはハイネにとって
意外なものだった。
「そう、あの子そんなこと言ってるの。困ったわね」
彼女はしばし考えてからこう言ったのである。
「そんなにお仕置きしてほしいのならやってあげましょう。その代わり中途
半端はだめよ。思いきり厳しくしてちょうだい。この際、そんな殉教者精神が
何の美徳にもならないことを教えておくことも大事なことかもしれないわね」
こうしてアリスに対し幼女としては異例ともいえるお仕置きが敢行されたの
だった。
「ねえ、もう一度聞くけど、本当にお仕置きしてほしいのね」
お仕置き部屋にアリスを連れてきたハイネはあらためて問いただす。
「………」
一方、確認を求められたアリスは戸惑った。そこは普段使っている部屋では
なくアリスが赤ちゃん時代、ハイネに折檻されているところをペネロープに助
けられたあの思い出の部屋だったのだ。
「ペネロープ様がそんな聞き分けのない子にはうんと厳しいお仕置きが必要
ねっておっしゃって……今度はペネロープ様の公認だから逃げられないわよ」
「…………」
アリスにためらいの気持ちがないといえば嘘になる。しかし、
「やめたいのなら今からでも遅くなのわ。私がもう一度ペネロープ様に申し
上げて……」
ハイネが助け船を出すとそれにははっきり首を横に振った。
「じゃあ、いいのね」
「はい。私が決めたことですから」
最後はきっぱりとそう言い切ったのである。
「そう、ではこれに着替えなさい」
ハイネはアリスに着替えを手渡す。それはニットのシャツと黒いブルマース
「ここでは汚れてもいいようにそれを着るの。着替えたらこっちへ来て」
アリスが着替えている間、ハイネは処置台で浣腸の準備をする。ゴムの水枕
みたいな容器に石鹸水を入れているのを横目で見ながらそれでもなぜかアリス
の心は落ち着いていた。
無理やり何かをやらされるのと自らすすんでやることの違いと言ってしまえ
ばそれまでだが、お仕置きするハイネの側にこれまでのような情熱が感じられ
ないことをアリスは女の直感で感じていたのかもしれない。
「さあ、ブルマーを脱いだら両足を高くあげて、そう、赤ちゃんがおむつを
替える時のあのポーズよ」
「え?お浣腸って横向きに寝てやるものじゃないんですか」
「おや、あなたよく知ってるわね。たしかにお医者様はそうよ。でもこれは
お仕置きのためのお浣腸だから女の子がもっとも恥ずかしがるポーズでわざと
やらせるの」
やがて肛門にガラスの管が突き立てられるとクリップが外れて大量の溶液が
波打つように体の中へと入ってくる。それはこれまでのピストン式の浣腸器の
ように途切れることがないため、いったいあとどれくらい入ってくるのか分か
らない不安があった。
そしてそのあまりの量の多さに、このままではひょっとして石鹸液が口から
溢れ出すんじゃないかとさえ思ったほどなのだ。
「止めて」
思わずアリスが叫ぶが、もとよりハイネがそれを許すはずがない。代わりに
「ゆっくり深呼吸をすればもっと楽に入るわ。ほらほら、お尻の力を抜くの
これはそんなに力を入れなくても漏れたりはしないのよ」
アリスはハイネに励まされてようやく一リットルもの溶液をお腹に貯め込ん
だが、もとより大変なのはこれからだった。
少しでも体を動かせばお腹の石鹸水も一緒に動く。まるで水槽をお腹の中に
入れて歩いているみたいなのだ。
「あ〜あ〜」
グリセリンのような激しい便意こそないが、それでもちょっとした衝撃で、
あたりは水風船に針を刺したようなことになりかねない。
「はあ〜はあ〜」
二枚の板を渡した簡単なトイレに膝をついてまたがるだけでも、ハイネの肩
を借りての大仕事だった。
「さあ、いいこと。ここで三十分我慢するの」
ハイネはアリスの両手を皮手錠で拘束しながらいとも簡単にいうが、万歳を
させられたアリスにとってその時間は絶対に無理と確信もてるほどの長い時間
だったに違いない。
「どうかしら、自分でお仕置きを申し出たこと後悔してない」
ハイネは意地悪く中腰になってアリスのブルマーを覗き込む。
しかし、
「………はあ……はあ…………あっ…………」
大きく肩で息をつき、時折襲う大波に体をよじりあるいは伸び上がるように
してやっとの思いで恥ずかしい洪水を耐えているアリスにはハイネの質問にも
意地悪にもそれに答える余裕がなかった。
「もう、だめ」
アリスは時々絶望を口にする。最初は七分後、その後は二三分おきに「もう
だめ」だった。しかし、
「だめよ、まだまだ。もし漏らしたらあんたの一番恥ずかしい処に焼きごて
だからね」
どんなに他のことに気を回す余裕がなくてもこの『焼きごて』という言葉は
強烈だ。ハイネが「焼きごて」「焼きごて」と威しつけるたびにアリスは緊張
感を取り戻しなんとか持ちこたえている。若さや羞恥心、幼い時の躾の厳しさ
などもそれを支えていたのかもしれない。それでも
「ああっ、」
二十分近くになるとそれまでにはなかった大きな声が………
「ああっ」
大きな波、重い波がアリスの小さく堅い堰を突き崩そうとしていたのだ。
「ああっ、ああっ」という大声の間隔がしだいに狭まり………
やがて…
「だめ、だめ、だめ、」
最後はそれだけ言ってぐったりとなった。
大半のものが一気に吹き出したあとでハイネはアリスのブルマーを脱がせる
「もう全部出しちゃいなさい。どうせここはトイレなんだから」
そう吐き捨ててブルマーだけをはぎ取り、さっとカーテンを引く。わずかな
時間だが、アリスに密室を提供してやるのはハイネのやさしい心遣いからだ。
「どう、もうすんだ」
十分ほどアリスの好きにさせたハイネが再びカーテンをあける。
「さあ、いつまでもめそめそしてちゃだめよ。まだまだお仕置きはたくさん
残ってるんだからね」
彼女は備え付けのホースの蛇口をひねるとまだ拘束されたままのアリスの体
を洗いはじめる。
「さあ、もう終わったんだから全部出しちゃいなさい。そんなもの体に残し
ておいたって何の得にもならないのよ」
ハイネはホースの先を絞って水を勢いよくアリスのお尻に噴射するとその手
で下腹をさすり肛門をこじあけ性器までも丹念に洗い清めたのだった。
「ごめんなさいね。ハイネ。こんなことまでさせちゃって」
「何をおっしゃいます王女様。あなたへのお世話ももうすぐ終わりだもの。
これくらい何でもありませんことよ」
「もうすぐ終わりって」
アリスが尋ねると
「ペネロープ様があなたの童女への昇進を決断なさったみたいなの」
「でも、あなたは私にずっと付いてくるんでしょう」
「そうはいかないわ。私はあなたが自分のことを一通りできるようになれば
お払い箱なの。童女になるってそういうことだもの。これからはペネロープ様
が本当のお母さまよ」
「え?もう、会えないの」
「そんなこともないわ。あなたの先生としてこれからも会う機会はあるはず
よ。でも、それはあくまで先生と生徒であってこんなことまではしてあげられ
ないわね」
ハイネはアリスの股間に入れたタオルで彼女の大事な処をひとなでする。
「いや、やめてハイネ」
アリスに久しぶりの笑顔が戻った。
「次は懲罰台。前に一度上がってるから要領は分かってるわよね。今度も手
足は固定してあげるけど猿轡はなしよ。どんなに痛くても声を出さないように
してね。でないと鞭の数がまた増えることになるから……わかった」
「わかりました。でも、…………はい、先生」
アリスが小学生のようにちょっとおどけて手をあげる。
すると、ハイネもそれに答えて。
「なんですか。アリス・ペネロープさん」
「このブルマー、また履くんですか」
「どうして?それはまだ使ってないから気持ち悪くないわよ」
「いえ、そうじゃなくて。どうせ懲罰台の上でまた脱ぐんでしょう」
「そうですよ。だから穿くの。ここは空調が効いてるから裸でだってできる
けど、それじゃあ脱がされたって気持ちがなくなって、恥ずかしさが半減して
しまうもの。お仕置きは苦痛半分、恥ずかしさ半分なのよ」
アリスは恥ずかしさの罰を受けるため再び新たなブルマーを穿くと懲罰台に
「はい、いくわよ。それ、ひと〜つ」
「ピシッ」
籐鞭より一回り細い柳の枝鞭がアリスのお尻にまとわりつくように赤い筋を
つける。
「はい、ふた〜つ」
「ビシッ」
柳の枝鞭の衝撃は籐鞭に比べればまだより小さいが、まるで剃刀で切られた
ような鋭い痛みが残るのだ。
「はい、み〜っつ」
「ピシッ」
「はい、よ〜っつ」
「ピシッ」
「はい、いつ〜つ」
「ピシッ」
ハイネは淡々と鞭を振るい、アリスの方も声を出さないという約束事を必死
に守った。
「はい、む〜っつ」
「ピシッ」
「はい、なな〜つ」
「ピシッ」
「…キャ…」
それでも七つ八つと重なる頃には子犬がいじめっ子に悪戯された時のような
掠れた甲高い声が漏れるようになる。
「それ、や〜っつ」
「ピシッ」
「…あぁ…」
「それ、ここのつ」
「ピシッ」
「痛い」
この時初めて意味のある声が出ると、あとはもう押さえきれなかった。
「さあ、もう少しよ。それ、じゅっか〜い」
「ピシッ」
「もう、やめて」
それはアリスの理性が言わせた言葉ではない。耐えられなくなった彼女の体
が無意識に声を出させるのだ。
「やめなさい。あんまり言うと本当に焼きごてが待ってるわよ」
「それ、じゅういち」
「ピシッ」
それから先は鞭がお尻に当たっているかどうかに関係なく「あわ、あわ、あ
わわ、わあわ」と声にならない声をあげ、まるで幼児が泣き叫ぶようにわめき
だしたのだ。
「それ、最後よ。じゅ〜に」
「ピシッ」
「はい、おしまい。……あらあら、あなただらしないわよ。一ダースぐらい
の鞭で………こんなの親が厳しければ小学生でも耐えるわよ」
アリスはハイネのこの言葉を自分が泣きだしたからだとばかり思っていたが
実は彼女、鞭打ちの最中にお漏らしをしていたのだ。だが当人はまったくそれ
に気がつかない。
「あ!」
懲罰台を下りブルマーを穿こうとして初めてそこが濡れている事に気付いた
アリスにハイネが母親のような口調で言い放つ。
「だからさっき全部出しておきなさいって言ったでしょう。仕方ないわね。
さあ、さっさとこれに着替えて」
そんな有様だから鞭打ちの途中部屋へ入ってきたペネロープにアリスが気付
くはずがない。
「!?………………!!」
アリスはどこかでかいだことのあるなつかしい匂いを感じとり、辺りを見回
して、そこで初めてペネロープがお線香を立てているのを発見するのである。
「アリス、こっちへおいで」
その声は普段は温厚なペネロープがたまにみせる凄味の効いた声だった。
「はい、おかあさま」
アリスとしては覚悟を決めるしかない。
『きっとお灸をすえるんだろうなあ。でも、焼きごてよりはまだましだわ』
彼女はそう思って自分を慰めるよりなかったのである。
「そこに膝をついて両手を胸の前で組むのです」
ペネロープはアリスに恭順を示すポーズを取らせると静かに語り始めた。
「あなたのお仕置きを見ていました。お浣腸は途中でこぼすし、鞭には声を
たてるし、とても私の娘にふさわしいとは言えませんね。本来なら幼女で修業
した方がよいのかもしれませんが、今はリサを救ってやらなければならないで
あなたを童女に引き上げることにします」
「お礼を言って」
ハイネが耳元でささやくのでアリスはあわてて
「はい、ありがとうございます。お母さま」とお礼を言ったが、次にはこう
切り返す。
「でも、なぜリサさんと私が関係あるんですか」
この言葉にあわてたハイネが
「アリス、やめなさい」
と諭したが、ペネロープはそれにはかまわずこう答えた。
「幼女は養育係を張りつけておかなければならないので人手が要るのです。
あなたもいったんは童女にしますが、まだ荷が重いと分かれば幼女に戻すかも
しれません。いいですね」
「はい、お母さま」
「よろしい、では今日のぶざまなお仕置きを償いなさい」
「はい、お母さま」
「では、そこに仰向けになって寝るのです」
ペネロープは処置台に視線を移して指図する。
そこで、アリスが処置台で仰向けになるとあとはハイネが手伝ってくれた。
「気持ちをしっかり持つのよ」
彼女はアリスのブルマーを太ももまで引き下げると、腰枕を使って剥出しに
なったアリスの三角デルタが寝ている彼女からもよく見えるように腰の位置を
高く保ち、さらに両手両足を処置台に固定しようとしたのだ。
ところが……
「ハイネ、その子を縛る必要はありません。この子はそんなことをしなくて
も立派に耐えられるはずよ。ほら、ごらんなさい。ここ」
ペネロープは今剥出しになったばかりの三角デルタを指差す。そこにはかな
り近寄って見なければならないほどかすかに灸痕が残っているのだ。
「あなたがたはお灸のことを焼きごてだなんて大仰な呼び名で呼んでるけど
お浣腸もお鞭もまともに受けられないこの子だって、かつて何度か経験がある
のなら声一つたてないはずよ」
ペネロープはさも自信ありげにハイネに呟くと古い灸点に三つ四つもぐさを
のせて一気に線香の火を近付けたのだった。
「…<え、全部一緒に>…<嫌、私、そんなことされたことないのに>……
…………<あっ熱い、痛い>……」
アリスにとってそれは熱いというより鋭い錐で揉み込まれるような痛みだっ
た。
「今度はうつぶせになって………」
「…………<ああ、いや熱い、痛い>……」
「さあ仰向けに戻りましょう。今度は赤ちゃんがおむつを替える時のポーズ
よ………」
「……<ああん、そんな処すえられたことないのに>………<いや、やめて
熱い、痛い。ああっつ〜い>………」
自信を持ったペネロープはハイネに見せつけるかのようにアリスにいろんな
ポーズを取らせるとさらに十数か所、なかにはとても他人には言えない処まで
もお灸をすえたのだった。
ただペネロープの言った通り鞭や浣腸と違いアリスはこれについてはついに
一言も声を出すことがなかったのである。
「どうかしら、私の言ったとおりでしょう。一ダースの鞭でさえお漏らしを
するこの子がこんなに沢山お灸をすえても声一つ上げないでしょう。つまり、
お仕置は慣れなの。これからは他の子にもこのお仕置きを多用していくわ」
アリスはこの時とんでもないことの実験台にされていたのだった。
<了>