<The Fanciful Story>

竜巻岬《15》
【第三章:童女の日課】
K.Mikami

《悪戯オンパレード》<2>

四人は土曜日の夕食をほとんど残していた。そして、日曜日の朝食にも誰も
手をつけようとしない。

「帰ろうか」

リサが言うとそれには誰も反対しなかった。どうせ食べないのだから腹ぺこ
の身には目の毒になるだけ。四人とも腰を浮かしかけたのである。すると、

「席を離れてはいけません」

食事係のメイドが慌てて四人を制止する。

「どうしてよ。食べる食べないは私達の自由でしょう」

ケイトが噛み付くとそのメイドは

「これはペネロープ様のご命令なのです。皆様の食事の皿にたとえパンひと
かけらでもあるうちは部屋へ帰してはいけないと言われているのです」

と言って譲らない。

『そうはいってもね』

四人は同じ思いで顔を見合わせる。たとえペネロープにそう言われてもだか
らといって食事に手をつける気にはならなかったのだ。

やがて、食事が終わり少女やレディーたちが部屋へ戻っていくとそこへペネ
ロープがやってきた。

「どうしたの、ずいぶんと食が細いようだけど。どこか具合が悪いのアン」

「……いえ、今日は食欲がないんです」

「昨日の夕食もだったでしょう。いくらかでも手をつけていたのはケイトの
お皿ぐらいだったかしら」

「私、便秘ぎみなんです」

ケイトがそう言ったとたん他の三人の厳しい視線が彼女に向く。

「そう、そうなの。ということは……アン、立ってごらんなさい」

ペネロープの指示にしたがってアンが椅子から腰を浮かすと

「スカートをあげてご覧なさい」

アンはもちろんいやだったが、やるしかなかった。

「そう、そういうことだったの。わかりました。とにかく神から与えられた
食物をないがしろにしてはいけません。童女であるあなたたちには特段の事情
がない限り与えられた食事を残す権利はないのよ」

「はいお母さま」

「それが終わったらまずシャワー室へ行きなさい。それからミサよ。遅れな
いようにいらっしゃいね」

「はいお母さま」

ペネロープが去り、童女たちの顔には心なしか元気が出た様子だった。

「ねえリサ。シャワー室にもこのベルトをつけて入るの」

「当然そうよ」

「だったらショーツが…」

「濡れるわ。でも、こんな時はお母さまがメイドに鍵を預けておいてくださ
るから新しいショーツに着替える時だけは貞操帯を外してもらえるの」

「え、だったらトイレへ行けるの」

「それは無理よ。ショーツを着替える間だけだもの。でも、おしっこはでき
るでしょう。シャワー室で」

「え、シャワー室でおしっこするの」

アリスの大声に古株の二人が角を出す。

「ちょっとあんたたちそれでも女の子なの」

「こっちはまだ食事中なのよ」

こうしてペネロープの好意により、四人は日曜日の朝に一度だけ小用をたす
チャンスができた。三人はさっさと用をすませてシャワー室を出ていったが、
アリスだけが取り残されている。

「さあ、早くしないとミサが始まってしまいますよ。みんなの前でお漏らし
するよりここの方がよっぽどいいでしょう」

最後まで抵抗するアリスに係のメイドがお尻を一つピシャリと叩く。

とたんに暖かい物がショーツの中に溢れやがて両足の太ももを伝って降りて
いく。降り注ぐ冷たいしぶきの中で涙するアリス。

「さあ、お腹のなかを空にしちゃうの。恥ずかしいなんて言ってられないで
しょう。もうお仕置きの時までこんなチャンスはないんだから…………これに
懲りたらつまらない悪戯はしないことね」

泣きだしてしまったアリスに中年のメイドは教師のような説教をして送り出
してやるのだった。

月曜日の朝、四人にとっては長いお仕置きのフィナーレがやってくる。彼女
たちはハワード先生が自らの創作活動や授業の合間に憩う控え室に集められた

「これから君たちには少女たちの前で絵のモデルをやってもらう。君たちが
立派な芸術作品をこしらえてくれたおかげでできなくなったデッサンの授業の
代りだ。ものの十五分も同じ姿勢を取っていればいいんだから、鞭でぶたれる
より楽だろう」

「裸で…」恐る恐るリサが尋ねると先生は即座に否定する。

「いやいや、衣裳はあるよ。リサ、君は農家の娘だ。ケイトが羊飼いの少年
アンは悪戯天使。アリス、君が一番いい役だ。昔のお嬢様をやってもらおう」

ハワード先生がそう言ってる間にメイドたちがやってきて着付けにかかる。

「君たちはその衣裳をつけて私が指示する姿勢のままじっとしていればいい
んだ。テーマは哀願。親や主人に哀願する時の表情をリアルに絵にしたいんだ
といっても君達は役者じゃないから演技はできない。そこで…」

彼は簡便式の浣腸器を取り出す。

「誰でも名優になれるこの秘薬を使うことにする。これなら条件さえ整えば
誰だって迫真の名演技をすることができるからね」

四人は誰彼となく顔を合わせそして諦めるしかないことを確認するのだった

やがて準備は着々と進んで、四人全員が四つんばいに。

『あっ』『おっ』『うっ』『えっ』

四人のお尻にいっせいに簡便式の浣腸器が突き立てられる。これはいわゆる
無花果浣腸と同じようなものだが使い捨てではないためにこの前は誰が使った
かわからない。その不安感そして不快感があった。

量は二倍に希釈したグリセリンが三十cc。演技中にアクシデントがあって
もいけないし、何より二日半の蓄積があるからそれで充分だったのである。

四人はさっそく舞台となるアトリエへむかう。すると期せずして拍手が湧き
起こった。アトリエは四つのブースに仕切られており、どこでも少女達が数人
画板を抱えて今やおそしとモデルの登場を待っていたのだ。

リサは足枷をはめられた少女が地面におしりをつけて上半身だけを起こし、
神に許しを請うところ。書き割りはのどかな田園風景だが清教徒の衣裳をまと
った男たちが彼女を取り囲み、告知板には『私は淫らな行為をしました』と書
いてある。

ケイトは羊小屋の柱に両手を鎖で縛られこれから主人に鞭打たれようとする
少年の役。書き割りにかかれた羊の足元にコンドームの箱が描き足されている
ところがみそだ。

アンは大きな帆立貝を背にしたビーナスの膝の上でお尻を叩かれている天使
どこのブースも人物まできっちり書き割りに描き込まれているが、ここだけは
美人で評判のハワード夫人がビーナス役で特別出演している。

そしてアリスは両親の前に膝まづいて哀願する少女。衣裳から見て十九世紀
後半のブルジョワ家庭であろうか。書き割りの片隅にはすでに鞭打ちの準備が
メイドたちによって整えられている。

もちろん四人の童女たちにとってはこんな舞台設定など気に掛けている余裕
がない。時折くすくすと忍び笑う少女たちの声さえも耳に入らないほどに彼女
たちは一つのことに集中していなければならなかったのだ。しかも

「アリス、もっと顔をあげて」

「アン、むやみに顔を動かさない。それじゃデッサンできないだろう」

「ケイト、柱に顔を着けるんじゃない。顔をこちらに向けて」

「リサ、いい表情だけどまさかもう漏らしたんじゃないだろうね」

ハワード先生が時々意地悪なことも言いながら四人を叱咤激励してまわる。

五分もたてば四人とも全身びっしょりの脂汗で息も荒くなる。

十分すぎる頃には

「頭を振るんじゃない」

たとえそう言われてもこれ以外に薄れゆく意識を呼び覚ますことができない
アリスの目にもリサの目にもすでに大粒の涙が光っていた。

だから…

「さあ、もうすぐ終わりだよ」

ハワード先生の言葉は描く少女たちに投げ掛けられたのだろうが、描かれる
童女たちにとっても貴重な気付薬となったのである。

 「さあ、時間だ。おしまいだよ」

先生はそう言うと舞台と客席の間に設けられたカーテンを引く。

やがて広いアトリエのあちらこちから……

「*******」

最後まで残っていたアリスのブースでも

「駄目だよ。アリス。ここでやるんだ」

ハワード先生はアリスの少女らしい哀願にも儼として言い放つ。

結局、アリスも室内便器(bedpan)に跨がるしかなかった。

「*******」

童女たちの日曜日はもちろん学校はお休み。でも、ミサに出たあとの彼女達
は何もすることがない。レディーになるまではテレビやラジオはもちろん新聞
さえも見ることができないし、付き添いがなければ村へも降りられないのだ。

そんな彼女たちが決まって集まる場所があった。お城に付属する修道院の鐘
つき堂の上だ。そこは四つの大きな鐘の真下までタラップがあって、その一番
上の段はやや広めになっている。ベッドとしては狭いが物思いにやふけるには
重宝する空間だったから違法は承知でいつもたむろしていたのだった。

「退屈ねえ。どうしてお母さまは私達にテレビを見せてくれないんだろう」

「決まってるじゃない。里心がついて逃げ出すからよ。そんな心配がなくな
った子だけをレディーとして認めるの」

「あ〜あ、いつになったらレディーになれるのかしらね」

「羽があったらなあ。今すぐ飛んでいくのに」

と、いつものように愚痴を言い合ってる時だった。これも決して今日に限っ
たことではないのだが、突然夕刻を告げる鐘が鳴りだす。

「グァ〜ン。グァ〜ン。グァ〜ン」

「わあ、もうこんな時間なの」

とにかく真近で鳴りだすのだからたまったものじゃない。四人はたちまち耳
を押さえるとタラップを降りていく。

「わあ、私、耳が壊れそうよ」

「ねえ、これからどこへ行くの」

「どこって……行く処なんてどこにもないでしょう。鐘が鳴り止んだらまた
上に戻りましょうよ」

「でも、今度はまた一時間後に鳴るのよ」

「そうだ、鐘を叩く棒があるじゃない。あの膨らんでる処に布を巻き付けれ
ばいいのよ。そうすれば音も小さくなるわ」

「でも、ばれない」

「わからないわ。やってみなきゃ」

「それはいいけど。そんな適当な布があるの」

「あるでしょう。みんな一枚ずつ穿いてるじゃない。鐘も四つだしちょうど
いいと思うんだけど」

「穿いてるってそれもしかして……」

「そう、それ。あれなら形といい大きさといいちょうどいいじやない。第一
伸びるから紐で縛る必要がないわ」

「ねえ、ケイト。それってひょっとして悪戯?」

「そうよ。みんな当然協力してくれるわよね」

「え、私、昨日コリンズ先生から一ダースも鞭をらったばっかりよ」

「それがどうしたの。いやなの」

「いやって訳じゃないんだけど……」

「大丈夫、一度やってみてあんまり音が小さくなり過ぎるようならやめるわ
すぐにばれたら悪戯としても面白くないもの」

ケイトはこう言ったが、幸か不幸かショーツ巻き付け作戦は頃合良く鐘の音
を小さくしてくれ、実験は大成功だったのだ。

それから二週間余り、多少音色の悪くなった城の鐘は童女たちのショーツを
巻き付けたまま鳴り続けた。

最初はすぐにでも発見されてしまうのでは、と鐘が鳴るたびその音色に気を
配っていた童女たちも、この頃になると四人集まっても鐘のことは話題になら
ない。当然、鐘の音が昔に戻ったとしても誰もそれに気がつかなかった。

そんなある日のこと。四人が揃ってペネロープに呼ばれる。こんな場合には
まず誉められることは期待できない。ただ、鐘の事をすっかり忘れていた彼女
たちはビニール袋の中に入った自分たちのショーツを見て初めて事の重大さに
気付いたのだった。

「これは三日前に鐘楼の定期点検にきた技師さんがご親切にも届けてくださ
ったものです。持ち主が分かったのでお返しします。あなたたちのでしょう」

ペネロープはそれだけ言うと目を閉じてしまう。その言葉は抑揚を押さえた
もの静かな調子だが、それだけに凄味があって彼女の秘めた決意が童女たちに
も伝わってくるのだ。

四人は恐る恐る自分のショーツを手にしたが、本来ならば出るはずの謝罪の
言葉がペネロープのオーラに圧倒されたのか出てこない。

そうこうしているうちに再びペネロープがこう言い放った。

「あなたがたは私の子供たちです。ですから私の信じる神様の子供たちでも
あるのです。その神様をないがしろにする行為はどのような理由があっても許
されません。どのように許されないかはコリンズに伝えてありますからそこへ
行ってお聞きなさい」

ペネロープはそれだけ言うと二度と口をきかなかった。ききたくなかったと
いうべきか。いずれにしても四人の童女たちはそれがどういう結果をもたらす
にせよコリンズ先生の処へ行くしかなかったのである。

その夜、童女たちはやっとの思いでベッドに辿り着いた。本来ならここで、
今日のお仕置きはやりすぎよとか誰々に比べて自分のは不公平だとか百花繚乱
のおしゃべりが展開されるのだが、今日に限っていえばどのベッドからも声が
でない。

「う〜ん」

時折、低い唸り声がするだけ。まさにそこは野戦病院の趣だったのである。

そこへ少し遅れてコリンズ先生が入ってきた。彼女は何も言わず四人の手当
を始めるが、これにも童女たちは何の反応もしめさなかった。

『まだお仕置きするんですか』とか『(手当てしていただいて)ありがとう
ございます』といった言葉がでてこないのだ。

四人はなされるままに手当を受けるとそのまま眠りこんだ。そしてコリンズ
先生もまた薄いマットと毛布を持ち込むとその夜は童女たちの部屋に泊まり込
んだのである。

次の日の朝、メイドがいつものように洗濯物を取りにくる。

「さあさあ、起きてください。お折檻の翌朝だからといって起きなくていい
というルールはここにはありませんよ」

彼女はいつものようにシーツをはぎ取っていく。

「さあ、手を離して」

リサのベッドへやってくると寝坊助が思わず自分の寝ていたシーツを掴んで
離さない。

二人の睨めっこがしばらく続いた後、メイドに促されてリサは渋々手を離し
たが、おかげて自分の粗相がばれてしまう。

「……しょうがないね。子供ならよくあることだけど。私の親もきつい処の
ある人だったから私もたまにありましたよ。すると翌朝さらに折檻が増えてね
子供って何て不幸なんだろうって恨んでましたっけ…」

事情はアリスも同じだった。あまりのショックやストレスに生理的な機能が
追い付かなかったのだ。

「おやおや……昨日のお折檻はよほどきつかったんでしょうね。もっとも、
ペネロープ様にしてみれば、あの鐘は革命で焼け落ちたご実家のお屋敷に唯一
残ってた遺品だから大切になさるのも無理はないですけどね。あんたたち手を
つけたものが悪かったのよ」

ケイトはそっぽを向いたままでシーツは掴まなかったが、やはり事情は同じ
だった。

「さあ、用がすんだらさっさと出ていきなさい。こちらにはまだ大事な仕事
が残ってるの」

おしゃべりなメイドに何もかもばらされてはたまらないと思ったのかコリン
ズ先生はメイドを追い返してしまう。実際四人に対するお仕置きは昨夜の折檻
でもまだ終わってはいなかったのだ。

「今日はシャワーはありません。さあ、これで体を洗いましょう」

メイドを追い出したあとコリンズ先生は洗面器にお湯を用意する。

四人は痛む体をおしてその場でネグリジェを脱がなければならない。素肌が
現われると昨夜受けた鞭傷が体のあちこちに残っているのがわかる。胸、お腹
背中、太もも、もちろんこんなことは今までに一度もないことだった。

「ではもう一度ベッドに横になりなさい」

コリンズ先生の指示に四人は無言で従う。二度にわたる高圧浣腸、雨霰と降
り注いだ鞭、意識朦朧となるまで言わされた懺悔の言葉、その他筆舌に尽くし
がたい責め苦の数々が彼女たちから言葉を奪っていたのだ。

コリンズ先生は四人の両手足を大の字にしてベッドポストに括り付けると、
やんごとなき刑罰執行人の到着を待った。

先生はこれから何が起こるかを説明しないが、この不自由な姿勢が意味する
ものの答えは簡単に導きだすことができる。ただ、だからといって特段の恐怖
も湧かなかった。彼女たちはそれほどまでに疲れきっていたのである。

やがてこの朝の儀式をつかさどる司祭がメイドを一人つれてやってきた。

彼女は何も言わず入ってきてあたりを一瞥、そのままアンのベッドへと押し
掛ける。そして、これまた何も言わずいきなりアンのネグリジェの裾を捲り上
げると、ショーツをほんのわずか割れ目が見える程度まで引き下げたのである

そのあとはアンが予想していた通りのことが起こっただけ。

『……う〜……熱い……痛い……いや……助けて……』

ペネロープは昨夜の折檻で痛んだ体を癒すべくあちこちのつぼに灸を下ろし
ていく。これに対しアンは自分のお腹の方からほのかに立ち上る煙をぼんやり
と眺めながら五分間も顔をしかめ続け、心の中で苦痛を叫び続けたのだった。

「よい子になりますか」

最後にペネロープが諭してもすぐには答えが返ってこない。彼女はそれほど
までに必死に耐えていた。熱さにというより、体に火を付けられたショックに
そして何より取り返しのつかない粗相に耐えていたのだ。コリンズ先生が

「さあ、よい子になりますっていうの」

アンの耳元で口添えしたのでやっと

「よい子になります」

という言葉がアンの口から出たが、彼女はこの時すでにかなりの量を失禁し
ていたのである。

慌てたコリンズ先生が

「あらためて浣腸しましょうか」

と提案したが、ペネロープはそれには首を振る。実際、幸か不幸か他の子は
おねしょをしたためにそのような問題は起きなかった。

ペネロープは他の三人にも同じ灼熱地獄の折檻を加えると、そのいずれから
も「よい子になります」という約束を得て部屋を出て行ったのだった。

『やれやれ』

四人にやっと生気が戻る。ところが、ここまでやってもまだ、四人に対する
お仕置きは終わらなかったのである。

次の日から二十日間、四人は普段より一時間早く起こされるとキャミソール
とショーツだけの出立ちで中庭に集められ、コインズ先生の号令のもと、ある
特殊な体操をやらされたのだった。

「ショーツをおろして、両手は頭の後ろ…前かがみになります。……アン、
もっと頭を低くするの。ほら、もっと。もっと。………全員が揃わないと先へ
進まないから他の子に迷惑がかかるわよ」

こうして全員がお尻を高く上げるポーズを取ると、彼女たちの後ろで控えて
いたメイドが革紐鞭を四人のお尻に一撃ずつゆっくりと間をおいて放っていく

「ピシャ」

「アン、こんなことぐらいでぐらついてどうするの。あなたはこの中じゃあ
一番のお姉さんなのよ」

「ピシャ」

「リサ、姿勢を崩さないの。あまりにだらしないとやり直させるわよ」

「ピシャ」

「ケイト、もっとお尻を高く上げて。あなただけまだお尻が低いわよ」

「ピシャ」

「アリス、しっかりしなさい。あんた寒いの。お膝が笑ってるわよ」

コリンズ先生は全員が正しい姿勢で静止できるまで待ってから、

「体を元に戻して。ショーツを上げて。きおつけ。……もう一度ショーツを
おろして。………今度はしゃがみます」

その場にしゃがみ込んだ彼女たちの足元には小さな篭が二つあってその一つ
には何枚もの真新しいハンカチが入っている。その一枚を抜き出すと、

「……アリス、まだ早いわよ。やり直し。前から後へ全部きれいに清めるの
それには最低でも二十秒はかかるでしょう。ちょこちょこなんてのはだめよ」

ここでしゃがんだまま性器や肛門をハンカチで奇麗に拭き取ると、次の号令
でそれをもう一つの篭に入れて立ち上がるのだ。

「よろしい。ショーツを上げて立ち上がります。……きおつけ。腰に両手を
あてて休め」

これで一回りだ。ほどなく、

「きおつけ。ショーツをおろして、両手は頭の後ろ…前かがみになります」

次の回の号令が始まる。

童女達はこの鞭とお尻拭きのセットを毎朝二十回やらされるのだ。噂を聞き
つけて少女たちにも早起きが増える。とりわけしゃがんでのお尻拭きはトイレ
を見られているようでこれまでにない恥ずかしさと苦痛を童女たちに与えた。

「もう、慣れたわ」

アンもケイトもリサやアリスが愚痴を言うたびにそう言い返し続けたが、心
のなかは違っていた。あのお尻拭きのポーズは何度やっても何度見られても、
やっぱり恥ずかしいのだ。

彼女たちがこの屈辱的な体操から解放され、やっと今回の事件でのお仕置き
が終了したのは十一月も末、もうあたりは冬の装いに変化し始めていた頃だっ
たのである。

                            <了>   

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