風俗資料館
     風俗資料館だより
    こちらのコーナーでは三和出版発行「マニア倶楽部」誌上にて連載された(現在、同誌にて中原るつによる「風俗資料館通信」が連載中です)風俗資料館初代館長・高倉一の「風俗資料館だより」をご紹介いたします。

    マニア倶楽部 通巻11号 1987年7月号(三和出版)
    ■羞恥異端の告白
    あたしにとってA感覚とは、いったい?
    〜それは幼い日にタイムスリップして記憶にいまなお鮮やかな万華鏡です。〜

    お医者さんごっこ
     それは、遠い遠いむかしの日のことでした。あたしがまだ小学校にも通っていなかった幼い日のことでした。
     その日、あたしは、いつの時代でも、どこの地方でも、ほとんどの子供たちが、幼い性の芽ばえとして、たいてい経験するだろう“お医者さんごっこ”を、していました。
     その“お医者さんごっこ”は、あたしと、隣家(となり)の健ちゃんという同い年の男の子と二人きりで、していたのです。
    「さあ、センセイが診察してあげましょう」
     大マジメな顔で健ちゃんは、あたしのスカートをまくり上げました。そして、パンティーを脱がせました。
     あたしは、そのとき、草原に敷いたゴザの上に、仰向けに寝ていたのです。あたしは、“患者”なのですから、それを当たり前と思っていました。そして、センセイの言うことは、そのとおりにしないといけない、とも思っていたのです。
     いま考えても、あたしも健ちゃんも、本気だったと思います。幼いなりに、やはりセックスへの関心は真剣だったようです。
      ★挿絵キャプション
      1930年代のフランスの寄宿学校を舞台にした劇画の1シーン
      エミール・ド・モナージュ作/
      ジョルジュ・レヴィ画の『リズとベスの冒険』より
     そして健ちゃんの“診察”が始まりました。
     健ちゃんの手が、あたしの下腹を撫でます。あたしはジッとしていました。
     すると、何を思ったのか健ちゃんは、あたしの両足を上に持ち上げたのです。そして、お尻の穴を撫でたのです。
     その時、あたしは、何とも言えない気持ちのよさを感じました。シビれるような感じが、頭のてっぺんへ抜けていくようでした。
     でも、時がたって、ふとそのときのことを思い出して気がついたのですが、健ちゃんは、お母さんが赤ちゃんのオシメをかえるときのポーズを、あたしにさせただけだったのです。
     健ちゃんにしてみれば、男の子と女の子の肉体的な違いは何となく分かってはいたのですが、その違いに手をつけることにためらいを感じ、肛門へタッチしたのだと、あたしは思います。
     でも、この時の“手ちがい”によって、あたしは、アヌスに関心をもつようになったのです。そして、それは、年齢とともに深まっていったようです。
     そんなふうでしたから、あたしはどっちかというとおマセのほうでした。早くからセックスに関心をもって、兄の書棚の医学書(兄は医科大の学生でした)をそっと盗み見て、男子性器の解剖図などに胸をワクワクさせたのです。もちろん、自分の性器を鏡に写したり、指で触れたりもしたのです。

    肛交からエネマへ
     中学、高校へと進むにつれて、その心情はいよいよ高まりました。けれど、人前では、そのコトはおくびにも出さず、おしとやかなお嬢さん育ちを装って過ごしました。ですから、だれ一人としてあたしがそんなエッチな気持ちをもっていると気づきませんでした。
     そして高校二年のとき、家庭教師を頼んでいた大学生に、むしろあたしのほうからしむけた形で初体験をしたのです。
     彼もあたしも若かったものですから、すぐセックスに溺れました。そのテの出版物をあれこれ読んでいたので、知識としてはかなりのものでした。ですから避妊にはじゅうぶん配慮しましたし、体位についてもいろいろと試してみました。たいていの場合、あたしがイニシアチブをとりました。
     ある日のことです。彼が希望して後背位で行うことになり、あたしは、四つん這いのポーズをとりました。
     彼のモノがノックしたと思うと意外なことに、ソレはアヌスに入れようとしているのです。彼は、アヌス性交をしようとしたのではなかったのですが、不慣れのため入れるべきホールを間違えてしまったのです。
     でも、彼の固いモノがアヌスをこじあけようとしたとき、あたしは、健ちゃんとの“お医者さんごっこ”で体験したより、もっと強烈な刺激を感じました。
     それは、ふつうのファックとはまるっきり違って、全身が小刻みに震えるような快感でした。
     やがて大学に入り、寮生活をするようになり、同室の先輩とのレズビアン行為で、あたしはすっかり、セックスのエキスパートに仕込まれてしまったのです。
     彼女から教わった最大のポイントは、アヌス性交は、たまには男女の間でも行われるが、大部分は男対男のものだということです。つまり、ホモセクシャルの世界でこそ、アヌス感覚、つまりA感覚は真価を発揮するのだと、彼女は言うのです。そして彼女が、あたしのアヌスにしたのは、浣腸だったのです。
     それからの二人は、かつて、あたしが家庭教師の大学生と溺れた性行為にもまして、浣腸に狂ったのでした。
     しかし、彼女の卒業によって、そんな生活は終わりをつげたのです。あたしは一時、フヌケのようになり、男を求めたり、オナニーに耽ったりしました。でも、あたしのセックスは満たされなかったのです。

    一人浣腸の快楽
     あたしは、悶々と日々を送っていました。そして、到着したところは、自分で浣腸することでした。
     でも、先輩にしてもらったような快感が得られないのです。
     あたしは悩みました。浣腸は、やはり施す人がいてこそ感じるとは思いましたが、いくら親しくしている人でも、こればかりは、頼みにくいことです。
     そこで、いろいろ工夫して、自分ひとりでも、官能を満喫する方法があると思いました。そしてたどりついたのが、いくつかの方法なのです。
     恥ずかしいのですが、それを告白しようと思います。それにしても、あたしの場合、先輩とのハードなプレイに慣れてしまって、普通では満足できなかったことを付け加えておかねばならないと思います。つまり、かなり高度というか、変っているからです。
     ひとりで浣腸するのですから、排泄を促進するような薬液ではなく、体温よりほんの少し温かいお湯を使います。
     まず三〇〇から四〇〇tのお湯を直腸内に注入し、しばらく我慢してから腸内の汚いものを出してしまいます。
     つづいて、八〇〇〜一〇〇〇tを挿入して、我慢できる限界までいったら排出します。
     こういったことを繰り返すと、直腸の中がキレイになると同時に腸壁が刺激に対して耐久性ができ、かなり大量に注腸できるようになるのです。
     もうこうなれば、高圧浣腸による大量注腸がムリなくできるようになるわけです。
     大事なことは、腹圧を低くすることです。そのために、お尻を上か横に出して、腹が下がるような姿勢だと、腹圧が弱くなり、流れ込む浣腸液の注入が容易になるわけです。
     水圧を強くするには、ポンプを用いるかイルリガートルを使えばいいわけです。液体を入れたバケツを高い場所に置いてもうまくいくはずです。
     こうして大量注入ができれば、ハラワタをすっかり抜き取られた感じで、くたくたに疲れはしますが、ほんとうにさっぱりした気持ちを味わえるのです。
     もう一つ、ジョウゴを使う方法もやってみました。
     ジョウゴといっても、ガラス製もあれば金属製もありますが、大きめのものの口の先に輪ゴムを巻いてからアヌスにセットします。
     この際、仰向けに寝て足を思い切り頭のほうに折り曲げます。
     このままだと姿勢が不安定ですから、足を支えるために、何か台か机みたいなものを使うとよいでしょう。
     そうして足を開くと、顔の前にお尻がくるわけです。
     それでジョウゴをセットするわけですが、お湯の詰まったヤカンかビールビンの口をジョウゴの縁にあてがって、お湯を注ぐわけなのです。
     こうして注入していくと、そのうちに吸い込みがだんだん悪くなって来ます。でも、根気よくつづけると、二〇〇〇t近くまでは、入ってしまいます。
     これは、姿勢にかなりムリがあって骨が折れますが、注入の状況が自分の目で確かめられるという点で、興奮を誘うのです。美容体操などやっている方なら、それほど困難な姿勢ではないと思います。――長い物語を、ここまで語ったそのご婦人は、恥ずかしそうに微笑んだ。思いつめたことを吐き出し、気やすさを覚えたのだろうか。The Enema As An Erotic Art And Its History という部厚いエネマの本を熱心に見ていた。浣腸器具などいっぱい掲載されている本である。
    (高倉 一)
    次号へ→


    出典:
    マニア倶楽部7月号 通巻11号
    昭和62年7月1日発行
    三和出版株式会社→★
    高倉一(たかくら はじめ)
    1914年(大正3年)8月21日-2004年(平成16年)9月29日
    1949年「夫婦生活」誌の編集者として雑誌業界に入る。戦後3大SM誌のひとつ「風俗奇譚(文献資料刊行会)」、アングラ文芸誌「黒の手帖(檸檬社)」等、数々の雑誌の編集長を経て、1984年に風俗資料館を開館(初代館長として2004年まで就任)。


    当「風俗資料館だより」のテキストの著作権は高倉一(風俗資料館)に帰属します。また再録に際し三和出版の許可を得て掲載いたしております。テキスト・画像等を無断で複製・転載・配布することを禁止いたします。(ただし出典を明記していただいての「引用」は歓迎いたします。ご希望の方は事前に必ずご連絡ください)


【戻 る】 風俗資料館 Tel:03-5261-9557/E-mail:pl-fs@kagoya.net
〒162-0824 東京都新宿区揚場町2−17川島第二ビル5F
copyright1996-2008 (C) ABNORMAL MUSEUM All Right Reserved.