2012.3.21
 濡木痴夢男のおしゃべり芝居 第百九十三回

 濡木痴夢男の縄研究会


 東京銀座の「ブラックハート」からたのまれて「濡木痴夢男の縄研究会」というのをやることになった。
 いまさら私が……という思いが、ないでもないが、じつは早乙女宏美の口ききがあってやることが決まったのだ。
 間に早乙女が入ったとなると、断ることはできない。
 この世界で彼女とつきあいはじめてから、なんと二十数年になる(ほんとはもっと長い)。
 私は人と知り合い、一時は仲良くつきあっていても、やがてはイヤになって離れてしまい、あとは断絶、ということが多い。
(まあ、たいていは私のほうに原因があるのだが)
 早乙女のように長いあいだ変わらずにつながっている例は、めずらしい。
 考えてみると、他人のことを敬称なしで、こんなふうに呼びすてにするのは、早乙女宏美だけなのである。
 どんなに親しい関係になっても、私は人を呼びすてにするようなことはしない。子供のときからそうである。
 それなのに、他人の前で声をかけるときでも、ためらいなく自然に「おい、早乙女」などと呼んでいる。
 まあ、それだけ心をゆるしているということだろう。
 この複雑で面倒な世界の中に生きていて、めざしている方向もイメージも共通しているのだ。
 イメージを共有し、めざす精神も一致している仲間なんて、そうめったにいるものではない。
 だから早乙女宏美、中原るつ館長、山之内カメラマンたち、SMの方向を同じくする仲間たちと、グループ「ともしび」をつくり、緊縛写真集「夕日の部屋」を発行したりしているのだ。

 考えてみると(考えてみなくても)SMの世界ほど複雑にして、ときに怪奇、多岐にわたっているものはない。
 私は全く否定しているのだが、女をハダカにして足をひろげさせ、股間に何かを挿入することだって(私は嫌いだが)SMといえばSMといえなくはないのだ。
 女に足をひろげろ、と命令しなくても、女のほうから勝手に、マタをひろげても、解釈の仕方によっては、SMといえば、SMなのだ。
 ま、いってみれば、人間の生、そして性そのものが、SMといえば、すべてSMになってしまう。
 だが、それをいってしまってはおしまいなので、私は一応「縄」を旗印(はたじるし)にしている。
 旗印とは、戦場で旗にかいて目じるしにする紋所・文字・物のかたちであり、それに従って行動する理念・目標のことである。
 などと、ことさらむずかしい解釈をしなくても、要するに、縄が「好き」というだけのことであるが。

 おや、私は何を言おうとしているのだ。
 そうだ、こんど銀座6丁目のビルの地下2階でやる「縄研究会」のことを書かねばならない。
 完全予約制で、限定10名ということである。早乙女宏美もくるといっていた(というより早乙女が世話役なのかな?)
 すでにチラシができていて、しかるべき場所に置いてあるらしい。私のところへはFAXできただけである。
 関心のある方は、まずこのチラシを、どこかで見てください。
 日時とか、会場への地図とか、くわしいことは、チラシを見て、電話をして、係の人にきいてください。
 インターネットで確める方法もあると思うが、私はいまだにパソコンを持っていない人間なので(ケータイ電話すら持っていない)そっちのほうでの案内は苦手なのだ。苦手というより、全くできない。
(何度も書いているように、この「おしゃべり芝居」も、Rマネがすべてやってくれている)
「ブラックハート」を検索すれば、このチラシが出現するのではないだろうか。
「縄研究会」は13:00から16:00までの3時間やります。だれかにモデルをお願いして、私の「緊縛」の極意(ごくい)をお見せします。
 モデルになりたい方があったら、遠慮なく申し出てください。どなたでも結構。
 モデルに対して、痛いことは一切しません。ですから、痛いことをお望みの方は、当会には向いていません。
 モデルを裸にしません。着衣のままで縛りを実演します。ですから、女性の裸を見たい人も、当会には向いていません。裸になりたい女性の方も、当会には向いていません。
 そのかわり「縄」「緊縛」に関して、私が知っている限りのことを、ていねいに、なんでもお話いたします。実演しながら、ゆっくりと何度でもくり返して説明いたします。
 縄のかけ方についての、参加者からの質問も、もちろん自由です。
 はじめて縄をお持ちになる方も、私が手を取ってゆっくりとお教えいたしましょう。
 私は営業用のSMビデオの撮影現場に、約3000回たずさわってきたので、ああいう映像の現場での裏話など、知りたいことがあったら、なんでもきいてください。
 私自身しゃべりたいことがいっぱいあって、じつはウズウズしています。
 他の場所ではうっかり話せないことでも、本当に「縄」が好きな人たちの集まりの中だったら、しゃべってもいいような気持ちになっています。
 この「おしゃべり芝居」の中でも、これまでにずいぶん私は、商業用ビデオの撮影現場での不満をいろいろ書いてきましたが、こんどは実際に、縄好き仲間を相手に、しゃべりまくるつもりです。

つづく

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